■ 35の夜プロジェクト (2006年12月29日)
1. 年末の年中行事
年末に気心の知れた高校時代の仲間で集りスキー、スノボ、サッカー等で汗を流した後、温泉に入ったり鍋をつついたりしながらその1年を報告し合う行事を高校卒業以来毎年続けている。 今年で17回を数えるこの年末行事、毎回楽しみにしているのだが、年々なんとなく盛り上がりやまとまりに欠けつつある気がしていた。
行事がパワーダウンしていく理由はなんとなく分かっていた。 参加してくれる同窓生が、様々な業界で、(セールスマン、エンジニア、メンテマン、アナリスト、システムエンジニア、デザイナー、マッサージ師、公務員、自営業等)様々な職種に就き、また、(独身貴族、子沢山貧乏、モトクロス馬鹿等)様々なプライベートを過ごして久しいため、皆の志向が拡散し、皆が同じ方向を向いていた昔のような会話ができなくなっているからのようだ。
様々な業界や職種の幅広い裏話が聞けるのは、それはそれで確かに楽しいのだが、 (昔はあうんの呼吸だった仲間の意見に素直に同調できない局面や、考え方の相異に戸惑った。
卒業間際に感じた『皆の心がひとつになったあの感じ、このメンバーでの昂揚感のようなもの』 は、もう2度と感じられないのだろうか?
2. 人を惹きつける行事 バンザイダートの忘年走行会に参加したのは、そんな時だった。 コース貸切交渉、模擬レース準備等、皆の笑顔のための努力を惜しまない幹事さと大さん。 今日のスローガン、円陣声だし等、数々の『演出』で巧みに会を盛り上げる監督。 彼らの本気度が皆に伝染して生まれる求心力、そして「忘年走行会は楽しかった」という口コミが広がり、 年を重ねる毎に増加する参加者。
『僕らの年末行事に欠けているのはこの求心力だ!』
「最近なんとなく惰性で動いている年末行事、今年は自分なりに積極的に取り組んで盛り上がる会にしてみよう!」 という気持ちがメラメラと湧いてきた。
3. 年中行事改造計画開始 年末行事を魅力的な行事にするために、まず思いついたのが最近話題のmixi(Social Networking Service)を利用することだ。
mixi上で参加メンバーで意見を交わせば、結束が強まるうえに、個別に予定を連絡する手間も省け一石二鳥となりそうだ。
『変化の早い時代、行事のやりかたも変えていかなきゃ!』
ということで、毎年参加してくれるメンバーへmixiの招待状を送り、改造計画をスタートさせた。話し合いを進めるうちに、「どうせならmixi上の高校同期のコミュニティーに今回の行事を公開し、新たな参加者を募り、行事に新風を吹き込もう!」ということになった。
「果たして、mixiでリアルに人が集められるのだろうか?」との不安もあったが、
『この行事、心温まる楽しい行事だから、ぜひ皆で参加しようよ。』
と、事情により参加できない旧友島本君(仮名)が率先して参加を呼び掛けてくれたお陰もあり、15名前後が集る目処が立った。
しかし、人数が増えるにつれ、僕の頭の中の疑念が大きくなってきた。
『年末行事って本当に心温まる楽しい行事だったっけ?』
4. 『「35の夜」プロジェクト』始動 今までの年末行事は(その場の雰囲気を大切にするという言い訳のもと)高校生活の延長のように、あまり計画を立てずに行っていたが、TVでよく流れているサラ金のコマーシャルのフレーズ、
「事前にちゃんと計画してね。」
が自分宛のメッセージに思え、 『参加表明してくれた人に後悔はさせない!』とばかりに行事計画を練練りはじめた。 志向が拡散しつつある友人や、卒業以来会っていない友人で1つにまとまり盛り上がる方法を考えるうちに、僕達に必要なのは、色あせた16年前の過去の思い出を拾い集めることではなく、今の皆で何かに取り組み、歴史に新たな足跡を刻むことだという思いが確信に変わった
『僕らの皐月祭(出身高校の文化祭名称)はまだ終っていない!』
かつて文化祭でクラスが1つにまとまったように、皆で夢中になって取り組めるような文化的プロジェクトを考えに考え、
『高校時代僕らのバイブルだった、尾崎豊『15の夜』の歌詞を 僕達なりに改造した『35の夜』を創り、皆でレコーディングする。』
というプロジェクト案と歌詞のたたき台を、熱くなった頭で一気に完成させ、新鮮味に欠けつつある年末行事に盛り込むことにした。
この「35の夜 プロジェクト案」をmixiに公開しようと、 送信ボタンを押そうとした所て、ふと冷静になり考える。
『これって本当に実現できるだろうか?』
成功させるには作戦を練る必要がありそうだぞ。
5. 回せ!石車 昔読んだ経営関係の書籍にこんなことが記されていた。
『業績の悪い会社を良い会社に変えるのは、「真ん中に棒が通った重い石車(石でできた巨大な5円玉のイメージ)」を回すようなもので、はじめにこの重い石車に回転を与えられるかどうかで勝負が決まる。一旦回りはじめさえすれば、重い石車(=人数が多い会社)であればある程、難なく回り続けるものだ。』
「35の夜プロジェクト」を成功させるのにも、このことがあてはまりそうだ。具体的には、「35の夜 プロジェクト案」公表時に、周りに食い付かせ、やる気にさせられるかどうか(重い石車を回転させられるかどうか)、が成功のポイントであり、そのためには、公開したプロジェクト案へ寄せられるはじめの数件のコメントが大きな意味を持ちそうだ。
『そうだ、あいつに根回ししておこう!』
高校時代、プロジェクトを共に行ってきた、気心の知れているはずの友人テルに、
『これからプロジェクト案をmixiにアップするんだけど、内容は読まなくていいから、面白そうとか、スゲー、とか皆がやる気になるようなコメント入れて!』
とメールを送り、プロジェクト案をアップした。 数分後、彼からの返信メールが届いた。
「とりあえず援護射撃はするけど、多分これ、盛り上がらなと思うよ。」
『ガーン!!!!!(バックミュージックはECHOESのDear Friend「♪変わったね、人が変わるあの嫌な瞬間を僕はまた君で味わうのか〜♪」)』
時の流れは恐ろしいものだ。彼の合意すら得られないとは。 僕だけが昔のまま取り残されているのか! このままこのプロジェクトを封印しようか?
6. 人を動かすもの 「レースに勝ちたい!、試験に受かりたい!、あの娘を振り向かせたい!」
望みを叶えるのに1番必要なものは、本人の思いの強さだと思う。 才能(能力)も確かに必要かもしれないが、余程のことでない限り 誰にも負けない思いの強さがあれば実現できると僕は信じることにしている。
そんな訳で、「35の夜プロジェクト」が思いの強さにより実現されていく成功イメージを、順を追って思い描いてみた。
- 「絶対やり遂げる!」という強い意志でプロジェクト情報を発信し、プロジェクト成功のために自ら汗を流す(本気度をアピール)
- 僕(発信者)の発言や発信した文書、全身の毛穴(?)から、『本気エキス』が放出され、友人にふりかかる。
- 『本気エキス』が友人(人間)の『本気で汗を流す者には自然と応援したくなる(適当にやってる人には応援する気にはならない)性質』を刺激する。
- 友人が『そこまで言うなら』と僕の考えに賛同してくれ、本気エキスを放出し始める。
- 友人全員が本気エキスを放出し、プロジェクトが成功する。
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結局、最終的に人間を行動に移すのは、心(感情)であるはずだ。 なので、プロジェクトを成功させられるかどうかは、プロジェクトの内容や計画書の善し悪しよりも、 そのプロジェクトを成功させたいと願う気持ちで、周りの人の感情を動かせるかどうか に懸かっていると思う。
かつては心が通じ合えた仲間達、 僕が石車を必死で回せばきっと手伝ってくれるはず。 この熱い思いはきっと届くはず。
7. 準備完了
不評だった歌詞のたたき台を何度も修正して完成させた。
作詞のポイントは、『前半を「15の夜」として高校時代を歌い、後半を「35の夜」にして今を歌うこと』と、
『皆の絆を強める言葉を連発し、何度も歌ううちに皆の心を固く結びつけてしまうこと (お手本は、オウム真理教の「修行するぞ」を連発するマインドコントロール手法)』の2点。
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35の夜 作詞 9期チーム 作曲 尾崎豊
落書きの教科書と外ばかり見てた俺 広い田んぼの中の校舎で届かない夢を見てた やり場のない気持ちの扉たたきたい 図書館でイビキをグウグウ見つかれば逃げ場もない しゃがんでかたまり背を向けながら 心のひとつも解りあえない大人たちをにらむ そして仲間達で今夜秘密の計画をたてる とにかくもう学校の授業は面白くない 大人達は心を捨てろ捨てろと言うが俺は嫌だった、15の夜
誰もがみんな主人公で迷いながら悩みながら それぞれのドラマ演じてた 放課後集る青少年、語りあうあの夜に 自由になれた気がした15の夜
20年の月日が気付けば過ぎ去り 夢見てた俺達も今や少し疲れた中年 生きていくことって楽じゃないよね 背負うものばかりが増え続け毎日に余裕が無い 恋の結末に苦しめられた かわいい子供のことを陰で支える俺 子供達は心を捨てろ捨てろと言うが俺は嫌なのさ 退屈な仕事で身をすり減らしたくない そうさあの頃と何も変わらないなんて無力な、35の夜
緩んだ体で走り出す海老高の仲間たち 毎年やる年の瀬の行事 今でも刺激を受けあって磨き合う仲間達 やる気を取り戻した35の夜
緩んだ体で走り出す◯◯高の仲間たち 毎年やる年の瀬の行事 来年もまた頑張りましょう誓い合うこの夜に 自由になれた気がした35の夜
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録音器材等の準備もOK! 後はプロジェクト当日を待つばかり。 果たしてうまくいくかな?
8. プロジェクト決行
当日は朝から過密スケジュールとなった。 テニス、フットサル、焼肉、温泉、母校潜入と遊びまくり、夕方予約しておいたカラオケボックスでプロジェクトの開始。
全身の毛穴を開き、蒸気を撒き散らす機関車のように本気エキスを放出!
友人達は予想通り引き気味だったが、1時間半という限られた時間で質の高い作品を創り上げようとする僕の思いが伝わったようで、すぐに建設的な意見をくれるようになり重い石車はゆっくりと回り始めた。
担当ソロパートのバーター、歌詞の変更、間奏での台詞作成等トライアンドエラーを繰り返す中で、久々に会う仲間同士にも自然と会話が生まれ、時間の経過と共に皆の気持がまとまっていくのが感じられた。
レコーディングは着々と進み、終了時間までに5テイクの録音(テイク4、テイク5では映像も撮るという想定外のおまけ付き)が完了した。
その後、ファミレス席を13席占領しての遅めの夕食を食べる。過密スケジュールの疲れと、皆で1つのことを成し遂げた達成感が心の壁を打ち砕き、十数年ぶりに高校時代に戻ったと錯覚するかのような活き活きとした会話ができた(やっぱりみんな変わってないじゃん)。
2006年をいい形で締めくくることができる楽しい1日だった。
9. 動画データ編集作業完了
35の夜プロジェクト動画編集作業完成。動画は PRIVATE(パスワード認証エリア)よりご覧頂けます。
10. 今後の展開
今後も(カンフル剤として)数年毎に年末行事にプロジェクトを取り入れていこうと思う。次回は今回の反省を生かしつつ、(例えば子供と共に参加できる年末行事にし、「子供のコーラスを入れる」など)新たな試みを積極的に取り入れ、今回よりも上の領域(?)を目指したい。
次回(『37歳の地図』プロジェクト?)もぜひ力を貸してね!
[35の夜プロジェクト 完]
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