１. 今年のいかだレースは？

　今年（2015年）もゴールデンウィークの数日前に多摩川いかだレースの案内状が届く。

「今年はどうしよう、、、。」

受験生の長女も、もうすぐ傘寿の若大将もレースに出る気は無いようで、４年前タイヤチューブいかだで「海老高自転車愛好会」としてレースに出た高校同期３人にお誘いメールを送る。
真っ先に参加表明してくれると思っていたテルから法事で参加できないとの返信が来たかと思うと、ジョーも手術の病み上がりで参加の確約はできないという残念な回答。

参加確定はゴッチャンと自分の２人だけ。話を出した手前引く訳にもいかず追加メンバーを募集。小・中・高の同窓生キングと息子のそうちゃんが参加表明してくれ、「海老高青春倶楽部」という新たなチーム名で申込書を作成して事務局へ提出し、今年も参加が決まった。

思い返せばいかだレースは今年で４回目。毎回少しづつだが着実にタイムを短縮し、昨年真ん中より上の39位まで順位を上げた。これまでの３回は4人乗りであったが、今回はほとんどの上位艇と同じ５人乗りで出場するため、20位以内も夢ではなさそうだ。

 

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２. 事前説明会（2015年6月10日）

　大会１ヶ月前に行われる事前説明会に、ジョーと２人で参加。説明会最後に行われる出艇順を決めるくじ引きで引き当てた数字（＝ゼッケン番号）は驚きの「１」。警察署チーム、消防署チーム、ダニエルカールさん千葉真子さんチームとスタートを切る第１レースは注目度大。何だか面白くなってきたぞ。

 

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3. いかだ作り開始

　昨年「雨どいヨット」を小改造して作った４人乗りいかだの浮力に余裕があったので、５人乗りとなる今年も同じ仕様のいかだを作れば何とかなるだろうと考えていた。
しかしながら今回は90艇の先陣を切って多摩川にいかだを浮かべるゼッケン１だけに、万一でも着水直後の浮力不足による沈没は避けたい。念のためメンバー全員の体重を確認しておこうとLINEに作った専用コミュニティーで皆に体重を教えてもらう。

ゴッチャン、ジョー、そうちゃんの体重はほぼ読み通りであったが、初参加のキングの体重を聞いて驚愕。

『えええっ！83キロもあるの！』

スマートだったキングの体がなんとなく大きくなっている感じはしたが、重くとも60キロ代後半だろうという僕の予想は大外れ。

『このままだと多分沈む、、、。』

いかだの浮力を20キロ近く簡単に増やせる方法は無いかと頭を抱えていると、定年後の悠々自適な生活を送る若大将からうれしい台詞。

「忙しそうそうだから、いかだの改造俺がやってやろうか？」

渡りに舟とはまさにこのこと、暗闇にひと筋の光が見える。若大将が協力してくれれば100人力だ！

 

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4. 試乗会（2015年６月28日）

　いかだの底面にウレタンフォームを１枚追加して浮力を増やした効果を確認するため、多摩川での試乗会を計画。
セレナにいかだを積んだまま河岸に入ろうとするも、許可証が無い車は河川敷には入れないと警備員の爺さんに止められてしまう。

「狛江市主催の古代カップで使ういかだの安全性を確認したいのですが川崎側から入るのも気が引けまして、、、、。どのような手続きをすれば許可証を発行して頂けるのでしょうか？えっ、そんなに手間がかかるのですか！警備員さんの裁量で何とかして頂けないでしょうか？」

営業で鍛え上げられたキングの巧みなトークのお陰もあり河川敷への乗り入れを許可してもらう。小田急線ガード下の河岸にセレナを停めていかだを下ろして試乗会を開始。

長さ3.9メートルのいかだに5人が縦１列に並ぶと窮屈でオール操作に支障をきたすので、最後尾だけ横に２人が並ぶ「１−１−１−２」フォーメーションでいざ出艇。

「あれれ？何だかすごく不安定だぞ！」

いかだが左右にふらつくのは、最後尾の２人が細長いいかだから左右にはみ出して座っているのが原因のようだ。皆が少しづつ体重をサバを読んでいるのか浮力に思った程の余裕はなく、左右のバランスが崩れる度に座席が水没、横転しそうで怖くて落ち着いて乗っていられない。

岸から様子を眺める若大将の提案で、１人がいかだから降りて4人１列に並ぶ「１−１−１−１」フォーメーションを試してみると、いかだは見違える程安定。やはり先程不安定だった原因は最後尾に2人が並んで座っていたからのようだ。
座る順番や座席位置を変えたりしながら、小田急線の橋桁を数周回って試乗会終了。

近所のジョー家の庭で足を洗わせてもらい、サイゼリアで昼食を食べながら作戦会議。ジョーの嫁さんに「病み上がりの旦那をそそのかす悪人」としてさらに嫌われちゃったかな。

 

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５.再試乗会（2015年7月12日）

　最後尾にタイヤチューブを縛り付け、その上に座席を増設して「１−１−１−１−１」フォーメーションができるようにいかだを改造。性能確認のためレースの前週に再び多摩川に集結。

仕事で来れないゴッチャンの代わりに若大将に乗ってもらうと決め、前から若大将、ジョー、キング、そうちゃん、まっちの順に１列に並んでいかだに乗って岸を離れる（全員でいかだに乗ってしまったため水面に浮かぶいかだの写真は撮れず）。

だいぶ安定感が増したと皆が言うが、最後尾のタイヤに乗る自分にはそんな感じはしないので原因を分析。塩ビパイプ部分ととタイヤ部分が剛体で繋がっていないのが原因のようで前席のそうちゃんと座席を交代。体重の軽いそうちゃんはタイヤ上の座席に乗ってもそれ程不安定な感じはしないようで、「ゴッチャン、ジョー、キング、まっち、そうちゃん」の座席順に決定。

席順も決まったので、試しに全速力で川を横断。オールを左右に持ち替える時間がロスになると、先頭のゴッチャンと前から３番目のキングは右舷、２番目のジョーと４番目のまっちが左舷と役割を決め、最後尾のそうちゃんが舵取りに専念してバランスを取るという方針を決定。
最後にボートレースに出場経験のあるキングに理想的なオールの漕ぎ方を教わり再試乗会終了。

帰宅後着座位置を低くするなど最後の調整を済ませ、若大将がそうちゃんへ舵取り方法をレクチャー。いかだレースに向けての全ての準備が整った。

 

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6. レース当日（2014年７月13日）

　今年もレースに合わせるかの如く台風が近付き大会延期を覚悟するも、台風は西寄りを通過し予定通りの開催が決定。いかだを積んで自宅を出発し、途中キングとゴッチャンを拾い青空のひろがるスタートの五本松へ。

同郷から参加の「ゼッケン89 鶴見川育成会」の方々から

「川の流れが速いため、今日のレースは１艇ずつスタートする特別ルールで行われる」

という情報を入手。ダニエルカールさん・千葉真子さんと直接対決できないのは残念だが、スタートラインのロープを掴んで6艇ずつスタートするのは確かに厳しそうな速い川の流れになるほど納得。

今年も応援に来てくれたヤッさんがレースの様子を動画にまとめてくれるそうで照れながらモデルとなっていると、狛江市長・ダニエルカールさん・千葉真子さん・ブルドックのゆるきゃらが近くを通り記念撮影をお願いする。ゼッケン１だと何となく話し掛け易い。
やがて開会式がはじまるが、開会式終了直後にスタートを切ると思うと話が耳に入らない。

開会式が終わり、

『青春倶楽部行くぞ！　』

と円陣声掛けで気合いを入れ、５人でいかだを持ち上げスタート地点のスロープへ。スロープを下り川にいかだを浮かべると、腰まで水に浸かる係のお兄さんが乗り易いよういかだを押さえてくれる。いかだに乗ってオールを手に持ち準備完了。周りから注がれる熱い視線に思わず武者震い。

ピストルの合図でレーススタート。歓声にかき消されぬよう大声を掛けながら水を掻くと、いかだは流れに乗っていい感じに加速する。他のいかだと比較できぬため、速いのか遅いのかは良く分からない。
オールを漕ぐのに夢中で聞こえなかったが、スタート直後に僕らのチームの紹介コメントが放送されたらしい。今年の紹介コメントをここに書いておこう。

「3年前に『海老名高校自転車愛好会ダンクラーズ』としてタイヤチューブのいかだで初参戦したときの順位は61位とパッツとしないものでした。
この冴えない成績しか残せずに終わるのは納得いかないと、
この度軽量塩ビパイプでいかだを新調。新たなチーム名『海老高青春倶楽部』にて20位以内を目指します。」

最後尾に付けた浮力の大きなタイヤチューブが悪影響を及ぼすのか、 いかだはFRの車がドリフトするかのように右に左に尻を振りまっすぐに進まない。タイヤの上でそうちゃんが一生懸命舵を取ってくれているが、いかだはオールでの推進力で進みつつも、速い流れに流されているためコントロールが難しいようだ。早目、早目に大きく舵を出すように指示を送るが、なかなかまっすぐに進まない。支流から本流へと入る中盤まで来ると、ようやく蛇行が収まり直進できるようになる。

数分はいい感じで進むも、川幅が広くなり川の流れがほとんどなくなると、今度はS字を描くように大きく蛇行をはじめる。オールの推進力のみで進んでいるようなので、舵を小さく出した方が良いと指示を送るも散々蛇行を繰り返した挙げ句に船首が川上を向いてしまう事態に。船首を川下に戻して再加速したいところだが、上位への希望が絶たれ気持ちが折れた皆の手が止まってしまい大幅なタイムロス。

川の流れがなくなった今こそ力強いオールさばきでゴールを目指しグイグイと進みたいところだが、自分を含めた運動不足4人組の体力は底を尽き、前半の威勢のいいオールさばきは戻らない。

川上からは、たくさんのいかだが僕らを目印にするかのうように最短コースで追い掛けて来る。とにかく後ろのいかだに追い越されるのだけは避けたいと最後の力を振り絞り、何とか誰にも抜かれずに暫定１位でゴール。

そうちゃんがストップウォッチで計ったタイムは15分12秒。レース内容はいまいちであったが、去年を６分以上上回るタイムに、これなら30位に入れそうだとひと安心。

あまりに暑さに和泉多摩川駅前の安楽邸に退避してのんびり昼食。やり遂げた感を感じながらエアコンの効いた部屋で食べる焼き肉は最高に美味かった。

河原に戻ると、昼飯を食べる間にレース動画を編集してくれたヤスが動画を届けてくれる。「固定概念を打ち破り」「ゴールに向かって心ひとつとなる」などの文字の入った素晴らしい動画どうもありがとう。

やがて例年通りの暑さの中閉会式がはじまる。法事の帰りに会場に顔を出してくれたテルを真っ先に見付けたそうちゃんが「よう！」と声を掛けて合流。ジリジリと焼かれるような暑さに、今年もまたやってきた夏を先取り。

表彰式終了と同時に張り出された順位を確認しに行くそうちゃん。目標の30位には遠く及ばない41位と昨年よりも悪い順位に唖然。今回は川の流れがとにかく速く、僕ら以外のチームもかなりタイムを短縮していたようだ。

１番スタートということで、ピストルの音と共に僕ら５人の勇姿がNHKニュースに移り良い記念となった。
有終の美で終わるつもりだったが、来年はどうしようか、、、。

【狛江古代カップ2015　成績】
チーム名／メンバー：　海老高青春倶楽部　／ゴッチャン、ジョー、キング、そうちゃん、まっち
順位／参加台数　　：　一般クラス41位／90艇　
タイム／受賞　　　： 　15分13秒／なし　

【2015年いかだレース参戦　完】