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8. 2016年いかだレース編 

もう1回だけ、、、


1. 今年のいかだレースは?    

 今年(2016年)もゴールデンウィークの数日前に多摩川いかだレースの案内状が届く。

「今年はどうしよう、、、。」

これまで4年連続でレースに出場してきたが、家族4人で出場できていないのが心残り。
娘が高校・息子が中学に進学してひと段落した今回こそ家族4人で出場できるのではないかと、娘・息子に声を掛けてみる。

「私は水泳部の練習が忙しいからそんなことやってる暇はない!」
『僕もいかだレースはもういいや』

親離れは子供達が大人へと成長するための健全なステップであると理解はしているものの、ほんの数年前は「来るな!」と言っても「パパのいかだ応援したいから連れてって!」と付いて来てくれたことを考えると実に寂しいものだ。

家族4人チームで参加の夢は、今年も実現できないのだろうか、、、。

 


 

2.軸足の変更

 今春、娘の高校受験が終わったタイミングで、「家族で旅行に行こう!スキーに行こう!ディズニーランドに行こう!」と声を掛け続けるも、ほとんど家族4人で出掛けられぬうちに春休みが終わってしまった。

今になって振り返ると、この時強く誘い過ぎてしまったのが子供達の親離れを加速させてしまったようだ。反抗心旺盛の子供達は誘えば誘う程逃げ腰になり、「(いつでも誘ってくる)親の誘いにはとりあえず断る」というプログラムが脳内に形成されてしまったようで、この一件以来家族で出掛ける回数が激減してしまった。

こんな状況下で子供達をいかだレースにしつこく誘っても話が好転するとは考えづらい。
気の乗らぬ子供達を無理矢理エントリーさせ、本当に出てくれるのかと胃が痛くなる思いでレース当日を向かえるよりも、気持ちを切り替え友人とレースを楽しんだ方が家族のためにも自分のためにも良いような気がしてきた。

家族より友達を選びはじめた子供達の背中を追い回してもきっと良い結果には繋がらない。自分も家族から家族以外に軸足を移して自らの生活を楽しんでこそ、新たな親子関係を築けるのではないだろうか?

 


 

3. 今年の目標と秘策

 第2の青春のスタート!のつもりでレースに挑むと気持ちを固めたが、やるからにはやはり上位を目指したい。目標を30位以内に決め、どうすれば目標が達成できるかこれまでの成績を見返してみた。

2012年の成績 61位(まっち、ゴッチャン、ジョー、テルの4人乗り)
2013年の成績 52位(まっち、息子、妻、若大将の4人乗り)
2014年の成績 39位(まっち、息子、妻、若大将の4人乗り)
2015年の成績 41位(まっち、息子、ゴッチャン、ジョー、キングの5人乗り)

12年いかだ1 12年いかだ2 12年いかだ3 12年いかだ3
2012年 61位 2013年 52位 2014年 39位 2015年 41位

こうして過去の成績を並べてみると、2014年まで直実に上げてきた順位が昨年落ちてしまったのに目に留まる。5人の意思の疎通ができずに蛇行を繰り返して大幅にタイムロスした去年の戦いを振り返るうちにこんな考えが頭に浮かぶ。

「もしかすると、僕らのいかだは乗る人数少ない方がいいのではないか?」

3〜5人乗りと定められている多摩川いかだレースの上位30艇のほとんどが5人乗りいかだで占められているが、短く軽量で直蛇行しやすい僕らのいかだは、漕ぎ手の人数を増やし出力を上げるより、いかに直進性を保つかが重要で、意思の疎通が容易な少人数の方がいい成績を残せるかもしれない、、、。

「テルが趣味の合唱コンクールに参加するためレースに出れない」、「3人乗りであれば、ほとんど無改造で雨どいヨットの舟部を使用できる」などの諸事情を総合的に判断し、今年はゴッチャン、ジョー、まっちの3人乗りでエントリーすると決め、大会事務局に申込書を提出した。

 


 

4. レースに向けて(2015年6月28日)    NEW

 今回のレースは、いかに直進性を保つかが勝敗の鍵であり、事前調整や練習が不可欠であると判断。雨どいヨットから水切り、セール、ラダー、センターボードを外した舟部を相模川に持ち込み、事前練習会を行う。

天井に吊るされたいかだ おふろで実験1 おふろで実験2

■A案 縦3人乗り(アウトリガー付)
 まずはヨット使用時に装着する横転防止用アウトリガーを付けたまま縦に3人並んで乗ってみる。

アウトリガーのお陰で浮力も左右の安定性にも全く問題は無いが、舟幅が広く水面に対してオールを斜めにしか下ろせない。オールを入れる角度に自由度がないと直進性を保つのが難しいため、他の案を考えた方が良さそうだ。

天井に吊るされたいかだ おふろで実験1 おふろで実験2

■B案 前列2人、後列1人乗り(アウトリガー付)
 前列だけでも左右2列に座れば、直進性を保ちながらスピードが出せるのではないかと前列2人・後列1人乗りを試してみる。

前列の2人はすぐ脇の水面にオールが入れられ漕ぎ易そうだが後列の自分が左舷・右舷のどちらかに続けてオールを入れると、いとも簡単にいかだは横を向いてしまう。オールを毎回左右交互に出し続けるのはロスが大きいため、この案も最適とは言えぬようだ。

天井に吊るされたいかだ おふろで実験1 おふろで実験2

■C案 縦3人乗り(アウトリガー無)
 
A案・B案で、浮力に余裕があると分かったので、アウトリガーを外して縦に3人並んで乗ってみる。左右の安定感は乏しいものの横転せずに漕げる許容レベル。オールも自由な角度で出せて直進性の調整もし易そうなそうなので、このC案に決める。

そして最後にいかだをまっすぐ走らせる練習。
ゴッチャン•ジョーと最後尾の自分が艇の逆側にオールを出しつつ、オールの角度や漕ぐ強さを調整すれば、何とか直進できそうだと分かる。もう少し練習を続けたいところだが真夏の暑さに早々に撤収。あとはレース当日にいかにチームワークを発揮できるかだ。

 


5. レース当日(2016年7月17日)

 どんよりと広がる曇が真夏の日差しを遮ってくれる理想的なコンディションの中、これまでで最高の98艇がスタート地点の5本松に集まり、レースが始まった。

今年のゼッケンは50で第7レースのいちばん手前、観客席側からのスタート。他のチームのいかだやレースを眺めたり、ドゥーパ編集部や鶴見川育成会の方と雑談をするうちにスタートの順番が回ってきた。『青春倶楽部行くぞ!』と気合いを入れてスタート地点へ続くスロープを下る。

天井に吊るされたいかだ おふろで実験1 おふろで実験2

『有終の美を飾るつもりで20位以内を目標に挑んだ昨年の成績は一昨年を下回るまさかの41位。このままひっそりと身を引くつもりがもう1人の自分がつぶやく『本当にこのまま終わるの?僕ら青春倶楽部の力はこんなものではないのでは?』今年は精鋭メンバーで30位以内という現実的な目標に向け頑張ります。』

僕らの紹介コメントが流れる中、他の6艇に続き水面にいかだを浮かべる。左右の安定性に乏しいいかだに乗り込み、スタートラインとして張られたロープを掴んで横移動しているとスタートのピストルの音。

「オイオイ、まだ準備できてないって!」

天井に吊るされたいかだ おふろで実験1 おふろで実験2

ジョーからオールを受け取り他のいかだから少し遅れてスタートを切る。練習通りゴッチャン、ジョーが右舷、最後尾の自分が左舷にオールを入れて水を掻きつつ先行する6艇を追い掛ける。
昨年のスタートでがむしゃらに漕いで蛇行してしまった反省を生かし、今回は舟首の微妙な動きを観察して微調整しながら流れが速いと思われる河川中央(川崎側)に切り込んで行く。蛇行する4艇をパスし3番手でスタート直後の雑踏を抜ける。

天井に吊るされたいかだ おふろで実験1 おふろで実験2

川の流れに対し、いかだが少しでも斜めになると車がドリフトするかのように舟尾が前方に流れ出てくる。

「オール逆!」 

の掛け声で、オールを入れる舷を左右逆にしたり、オールを横から掻いたりしながら船尾の流れ出しを抑えつつ、理想のラインをトレースする。しかしながら僕らの軽く短いいかだは水面に浮かぶ木の葉のように旋回性が強く、一旦横流れがはじまると、いくらオールを横から強く漕いでも修正が難しい。まだまだこれからだというのに日頃の運動不足のせいでだいぶ体力を消耗してしまう。

河川中央(川崎側)に寄り過ぎてしまった進路を狛江側へ戻しにかかるも、狛江側後方から迫る子供3人を含む5人乗りいかだとの接触を避けるといかだはさらに川崎側の浅瀬で亀状態になり座礁。
いかだを下りて舟尾からいかだを押しながら川底を歩くが、後ろから強く押すとどうしても舟首が川崎側を向いてしまう。ゴッチャンとジョーに船首を狛江側を向けるように説明するも意図がうまく伝わらずタイムロス。座礁した場合は全員で川底を歩いた方が良さそうだ。

何とか浅瀬を通過し、再び3人で漕ぎはじめる。毎年ゴールが近付く程にペースが落ちるのだが、今年はゴッチャン、ジョーがいいペースで漕ぎ続けてくれて予想外にもいいペース。先程追い抜かれた子供3人が乗るいかだに追い付き、そして振り切る。

「大人の力をなめるなよ!」

ゴッチャンとジョーがハイペースでオールを漕ぐと、逆側にオールを入れる自分も同じようハイペースで漕ぎ続けねば蛇行してしまうので、レッドゾーンに入ったエンジンをさらに回すかのように力を振り絞る。息も絶え絶えにゴールになだれ込みようやく戦いが終わる。

天井に吊るされたいかだ おふろで実験1 おふろで実験2

いかだを岸に上げ、ライフジャケットを脱いでいると、

「あれ、まっちだけ、なんでTシャツ乾いてるの?」

と汗で変色したTシャツのゴッチャンとジョーから疑念の眼差し。

「後ろで見えないのをいいことに休んたんじゃない?」

「イヤイヤ、僕も懸命に漕いだって(笑)!」

 

例年通り涼しい安楽邸で焼き肉を食べてから閉会式に参加。今年の順位は33位でタイムは20分25秒。30位と2秒しか差がなくスタートの出遅れが悔やまれる。

目標にあと一歩及ばないもののこれまでの最高順位を更新できたのである程度は満足。
これまで「レジャー」だと考えていたいかだレースが完全に「スポーツ競技」だと感じるレースであった。

 

【狛江古代カップ2016 成績】
チーム名/メンバー: 海老高青春倶楽部 /ゴッチャン、ジョー、まっち
順位/参加台数  : 一般クラス33位/97艇 
タイム/受賞   :  20分25秒/なし 

2016年いかだレース参戦 完】