■ ファミリー壁作り奮闘記(2013年4月〜5月) これまでなっちとそうちゃんには1つの子供部屋を共同使用させていたが、数ヶ月前からなっちが自分だけの部屋が欲しいと言いだした。 風通しの良い家族関係を維持したい思いがあり耳を貸さずにいたが、なっちはもう中学生、自分自身と向き合うブライベートな時間も必要かもしれないと本気で対策を考えることにした。 今2人で使っている約10畳の子供部屋にはドアを2つ用意してあり、部屋の中央に壁を作れば2部屋に分割できる。家具やパーティションで分ける方法もあるが、音漏れ、光漏れ、見映えを考えると、他の壁と同じ在来工法の壁で仕切るのが良さそうだ。業者に見積もりをお願いすると算出された金額は25万円。 『これってかなり高いんじゃないか?』 どう考えても材料費が10万円を超えるとは考えにくく、本心から欲しいとは思えない壁にこれだけの金額を支払う気にどうしてもなれない。 「でも、あなた(おじいちゃんと違って)DIYとか全くできないじゃん。残念!」 『むむむむむ、、、』 言われっ放しでいいのか俺。この機会を不名誉な我家の定説を覆すチャンスと捉え、壁作りにチャレンジしようという気持ちに火が点いた。
2. リフォーム会社設立 1. 天井と床に横梁を取り付ける。 手間はかかるが特別な工具や能力は要らず、これなら自分で作れると確信。だが、巨大な石膏ボードの運搬や壁紙貼りには人手があった方がいいと、そうちゃんに声をかける。 『ゴールデンウイークに大金を稼げる仕事があるんだけど一緒にやらない?』 「それって壁作りでしょ!」と言う勘のいいそうちゃんを相棒に迎え、 (楽)まっち&そうちゃんリフォームを設立〔学びながら楽しむのが目的なので(株)ではなく(楽)〕。 『材料費5万円にもうけ5万円×2人分を上乗せした15万円でママから工事を請け負おうと思うけどどうかな?』とそうちゃんに相談すると、「プロみたいに上手く作れないと思うから10万円位にしておこうよ。」とパパを見くびった意見。だが確かにやって当たり前である家の手伝いをした子供に5万円を支払うというのはちょっと行き過ぎな気がして見積り金額を10万円に決定。 『GWに壁作りを10万円の破格で引き受けてくれるリフォーム会社があったから発注しちゃうね。』「分かった。今手持ちが無いから立て替えといて!」 こうして(楽)まっち&そうちゃんリフォームは工事を初受注。今年のゴールデンウイークは忙しくなりそうだ。
3. 工事キャンセル? 壁を作るにあたり、まずは部材購入に必要な寸法を調べようと子供部屋分割位置に目印の糸を張り寸法を測っていると、そうちゃんの表情が曇りだす。 「こんなに小さくなるなら僕部屋分けたくない!」 子供部屋は窓やドアの位置関係からどうしても中央に壁が作れないため、年上のなっちに大きい方のB室、そうちゃんに小さい方のA室を割り当てるつもりでいたが、A室はベットと勉強机を置くとほとんど足の踏み場がなくなり、時々部屋に友達を呼んで遊ぶそうちゃんが嫌がるのも頷ける。 『そうちゃんが嫌みたいだから、部屋分けるのもう少し先にしようか?』 どうしても自分だけの部屋が欲しいなっちはあの手この手でそうちゃんを説得しようとするがそうちゃんはどうしても嫌だと突っぱねる。 『やっぱり2人の部屋だから2人が合意しないと壁は作れないよ。今回は天井に梁だけ作っておいて、あと1〜2年はカーテンで仕切ることにしよう。』 と2人の折中案で話をまとめようとすると、雲行きの悪くなったなっちが口を開く。 「冷蔵庫の抹茶アイス私に譲ってくれたら、そうちゃんに大きい方の部屋譲ってあげる。」 大きい方の部屋を譲ってくれるならばとそうちゃんは壁作りを了承。晴れて壁作りの開始となった。
4. 作業1日目:梁(上側)を天井に固定(2013年4月29日) 建築図面から天井裏に野縁の通っている場所を調べ、天井の石膏ボードに目打ちを突き刺しながら野縁の正確な位置を割り出し、そこに木ネジで梁を固定しようとするが、どういう訳か木ネジが奥まで突き刺さらない。 『面倒だ。屋根裏に入ろう!』 寝室押入に屋根裏入口を見つけて入ろうとすると、リュックサックに食料や飲み物を詰め込む何か勘違いしているそうちゃんとなっち。100V電球を片手にサウナのような屋根裏に入り、子供部屋の真上部分の断熱材を剥がす。 『野縁が金属製角パイプだったから木ネジが刺さらなかったんだ!』 木ネジでの固定をあきらめ、ボルトとナットでの固定に方針転換。野縁(角パイプ)・天井(石膏ボード)・横梁(木材)にドリルで貫通穴を開け、室内側からボルトを差し込み屋根裏のそうちゃんに天井越しに声を掛ける。 まっち :『1つ目の穴に今ボルト差し込んだよ!』 こうして野縁への梁(上側)の固定完了。 『屋根裏に入った記念に壁にマジックで何か書いておけば?』 少年時代に住んでいた家の屋根裏に僕が書いた落書きは、今でもまだ残っているのだろうか、、、。 5. 作業3日目:梁(下側)と間柱の取り付け(2013年4月30日) 天井に取り付けた梁(上側)の両端と接する壁に間柱、梁(上側)の真下のフローリングに梁(下側)を木ネジで取り付け、壁の外枠部分を完成させる。
そして、その外枠の中に450mmの等間隔で間柱を立てる。間柱は構造材ではないので、梁(上側)との間に数ミリの隙間を開け、L字金物を使って木ネジで固定。梁と間柱の側面に段差ができると石膏ボードを密着して貼れなくなるので、L字金物の固定穴のど真ん中に正確に下穴を開けてから木ネジを打ち込んでいく。1人作業の場合はF型クランプがあると便利だろう。 夕方、翌日の作業用に厚さ12.5mmの壁用石膏ボード6枚(カット不必要分)をホームセンターに買いに行く。石膏ボードは考えていたよりもずっと重く、周りにぶつけぬよう2階子供部屋まで運ぶのにかなりの体力を消耗。今後の 作業についてYOUTUBE動画で調べるつもりが力尽きて早めに就寝。
6. 作業4日目:石膏ボード貼り(片面)(2013年5月1日) 原寸のまま石膏ボード(1820×910)が貼れるのは片面3枚ずつの6枚だけで、残りの部分は必要寸法にカットしなければならない。カット位置を図面に書き、ホームセンターで新たに石膏ボード3枚購入時にカットをお願いすると、 「石膏ボードのカットサービスは行っておりません。」 と断られてしまう。石膏ボードはカッターナイフで切れるため、おそらく他のホームセンターでもカットサービスは行っていないとのことで、しょうがなく工作室に持ち込み自分でカット。はじめのうちは両面からカッターを入れて割っていたが、どうせ面取り加工をするんだからとをするからと、途中からは片面だけにカッターを入れてカット、1時間程で切断作業完了。 7. 作業5日目:配線・断熱材工事(2013年5月2日) 昨晩カットした石膏ボードでまずは間柱のA室側を塞ぎ部屋を二分割。B室側で流していたバックミュージックがA室まで届かなくなったので、スピーカーをA室にも追加し、マイブームの角松敏生を聴きながら端材で壁の隅にケーブル連絡口を作る。 間柱の間に防音材兼断熱材を詰め、石膏ボードでB室側に蓋をしようとするが、ゆっちがもっとたくさんの防音材を入れたがり、今日も午後からいつものホームセンターへ。 このところ毎日長時間ホームセンター内をうろついては部材を探してもらったりカットをお願いしたりしているので、すっかり店員さんと顔なじみとなった。 「そうだなぁ、パテ埋めに使うヘラは金属とゴムの2種類を何かと便利なので買っておいた方がいい。この店で売っているヘラや容器は値段が高いから、フレスポ内にある100円ショップに行って買った方がいい。』 良い壁を作るために店の利益よりもこちらの気持ちを優先して親身に相談に乗ってくれる姿勢に大助かり。「今後ホームセンターに買い物をする時は必ずこの店で買おう」と誓いたくなるようなひとときであった。
8. 作業6日目:石膏ボード貼りとジョイント部パテ埋め(2013年5月3日) A・B室のパテ埋め終了。乾くまで次の作業はできないので、今日も昼からホームセンターへ。「おう!パテ埋め上手くいったか?」と気さくに話し掛けてくれる鉄男サンにスマホの写真を見せると「おー、頑張ったねぇ。」とお褒めの言葉。写真をのぞき込む鉄男サンのうれしそうな笑顔が印象的。 今日は鉄男サンに壁紙貼りについて色々教えてもらう。糊付・糊無のどちらを買おうか迷っていると、 「糊付は水につけるだけで確かに簡単だけど、柄が選べないし値段が全然違う(高い)から糊無でやってみたら?」 と助言を頂き糊無を必要寸法×8枚にカットしてもらい購入。「今日は木工室忙しくないのでずっとこの辺りにいるから何かあったら呼んでくれ。」と言ってくれる鉄男サンに、壁と床の間に取り付ける「幅木」、壁と天井の間に取り付ける「回り縁」の取り付け方なども教えてもらって店を後にし、ゆっちが前々から気になっていたと言う階下のジャミジャミバーガーでのんびり昼食を食べて帰宅。 夕方、肉痩せしたパテの増し埋めをしていると、部活から帰ってきたなっちが部屋を覗くなり、「なんだ、今日はあまり進んでないじゃん。」と全然手伝わない割には何だか偉そうな発言。「今日も壁作ってくれてありがとうとか言うのが普通なんじゃない?」と言うゆっちに激しく同感(笑)。
9. 作業7日目:パテ削り&壁紙貼り(2013年5月4日) 「もうこれ位でいいんじゃない?」と言うゆっちに「まだまだこれからだよ!」と返すつもりが単純作業に飽きてしまったせいで「これでいっか!」という言葉が思わず口からこぼれてしまう。明日の連休最終日位どこかに遊びに行きたい気持ちが膨らみ、仕上がりの甘さには目を瞑りパテ削り作業終了。幅木と回り縁を取り付け、最後の難関「壁紙貼り作業」を開始。 はじめに床に壁紙を広げ、そうちゃんが水と配合して作った糊を、ゆっちがローラーで壁紙の裏面に塗り、脚立に乗ったまっちに手渡す。次にそれを3人がかりで壁に貼り付け、まっちがカッターナイフでではみ出し部分や重なり部分をカットする。これを4回繰り返し、まずはA室側を貼り終える。 糊を半分以上使ってしまったので、このままでは足りなくなると夕食後に閉店間際のホームセンターに駆け込み追加購入、続きは明日に回すか悩むもB室側に着手。最後の8枚目を貼り終え、全ての端部の処理が終わると、丁度ラジオから午前0時の時報。 『終わったぁ!!!』 子供部屋を分けるという我家の歴史の1ページを、業者に頼むのではなく家族の成長を噛み締めながら自分達で刻めたことに(お金の節約以上の)大きな満足感を味わいながら風呂に入る。『明日は浮いたお金と時間でディズニーランドにでも行こう!』などと話しながら気持ち良く眠りに着いた。 10. 作業8日目:総仕上げ(2013年5月5日) 数日前に剥がしたタイル式じゅうたんを完成した壁に合わせてカットして敷き、その上に家具を再配置(なっちのA室は小学校入学以来学習机に載せていたベットを床に下ろし、そうちゃんのB室は大量のおもちゃを処分してスペース確保)。昼食後、買い忘れていたコーキング用シリコーンをホームセンターで買い、既存壁との接合部を仕上げ、全ての作業が終了。 丁度部活から帰って来たなっちが、自分の部屋を確認するなり、「パパが壁作るって聞いた時まずい事になったって思ったけど、ちゃんとした壁ができてちょっと見直した。」と言ってくれる。いつも辛口のなっちらしからぬ発言に満足感が込み上げる。結局連休中何処にも遊びに行けなかったが、毎日何かのアトラクションに参加してるかのような発見や感動に満ちたいい連休であった。 「(楽)まっち&そうちゃんリフォーム」初仕事完了ということで、依頼客のゆっちに約束の10万円を請求すると、 「そうちゃんに給料が出て(同じ位工事に貢献した)私に給料が出ないのはおかしい!」と支払いを渋られてしまう。 結局材料費に数千円を上乗せしただけの5万円しか回収できず、(楽)まっち&そうちゃんリフォームは今日をもって倒産。「ゴメンそうちゃん、会社が潰れたから残念だけどそうちゃんへのお給料払えなくなっちゃった。」 【ファミリー壁作り奮闘記 完】 |