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■ もうすぐ30プロジェクト   (2000年12月29日)

 

1. エコーズ再結成ライブ
  『自分には20代でやらねばならぬことがまだまだあるはずだ!』と迫り来る30才の誕生日に焦りを感じていた2000年の出来事である。

その年の年末12月28日に高校時代僕らが兄貴のように慕っていた辻仁成が率いる伝説のロックバンド「エコーズ」が日本武道館にて一夜限りの再結成ライブを行うとの情報を耳にする。これこそ久々に旧友と盛り上がるにぴったりだと、約10年前のエコーズ解散ライブで共に拳を突き上げたテル、ゴッチャンに声を掛ける。

「エコーズならもちろん行くよ!」

との昔と変わらぬ反応にホッとしつつ3人分のチケットを購入。押し入れの奥から高校時代擦り切れる程聞いていたエコーズのカセットテープを探し出し、久々に聞いてはライブに向けて気分を盛り上げていた。


エコーズを聴くうちに忘れかけていた高校時代の記憶がリアルに蘇る。芥川賞など数々の文学賞を受賞する前の若き日の辻仁成が書いた歌詞には、青春時代特有の悩みや迷い等の、(光ではなく)影の部分を照らし出すようなネガティブな雰囲気の漂うものが多く、そこから思い出されるのは「挫折を味わった苦い思い」や「失恋の突き刺すような胸の痛み」等忘れてしまいたいと考えていた辛い記憶が多い。

しかしながら10年以上の年月がこれら「負の遺産」「青春時代を象徴する貴重な想い出」に変えてくれたようで、未だに込み上げる当時と同質の苦い思いや胸の痛みに懐かしい心地良さを感じていた。

(高1の春にリリースされたエコーズオリジナルアルバム『Goodbye gentle land』、高2の春の『HURTS』、高3の春の『Dear Friend』は、それぞれ、孤独な高1、迷いの高2、充実の高3と絡み合うように僕の胸の奥に「エコーズ最高傑作3部作」として深く刻み込まれている。頻度には聞きたくはならないが自分の原点を確認できるような貴重なアルバムなのである。)


2. 新しい時代を迎える前に
 数日後に21世紀、そして数ヶ月後には30才になる時代の大きな節目にいるというのにその実感はほとんどない。このままただ何となく新しい時代を迎えるのは何か物足りなく思え、この大きな節目と丁度タイミングを同じくして行われる今回のエコーズ復活ライブを、前向きな気分で新しい時代の扉を開くための区切りの儀式(20代の卒業式)にしようと考えた。

しかし、ただ受身的にライブを聞くだけでは、区切りの儀式としてはいささか物足りない。 この復活ライブの行われる世紀末の1日を一生記憶に残るような特別な1日にするために、 ライブ終了後カラオケBOXでエコーズを歌い、当時話題になっていたCDRを使ったCD作成サービスで、20世紀、そして20代の僕らの歌声をCDに残さないかとテルとゴッチャンを誘う

「どうせなら、今の僕らの気持を盛り込んだオリジナルな歌詞で歌おうよ。」

とトントン拍子に話が進み、「偏差値ばかり気にしてると猫背がひどくなりそうだ」という歌詞が印象的な『GENTLE LAND』の歌詞をアレンジして歌うということで話がまとまった。



3. 準備完了!
 復活ライブ当日は、新宿駅に早めに集合。CDが作れるカラオケBOXが近くに見つからず、録音機材としてヨドバシカメラで録音機能付カセットプレーヤーを2千円ずつ出し合って購入。マクドナルドに入り、トレー紙を裏返した上に3人で持ち寄った「GENTLE LAND」のおいしい部分を繋ぎ合わせた歌詞を完成させる。さらに前奏でのナレーションや間奏での台詞を散りばめ準備完了!


『GENTLE LAND(20 CENTURY VRESION)(括弧内黒字が辻仁成作詞の原曲)

<ナレーションA> 2000年12月28日エコーズ武道館コンサート
<ナレーションB>
あと4日で21世紀そしてもうすぐ30歳
<ナレーションC>
でも魂はいつでもTeenagerさ!
<ナレーションD>
カモーン!!!

Ah 二十歳を過ぎると時が経つのが年々早くなり
(Ah 友達をいつも蹴落とすことばかり教えこまれてきた)

Ah 気付けば俺達つまらない大人になってしまいそうだぜ
(Ah この街の中じゃ パパだってどうだか分からない Big City Rule)

あの頃の気持ち忘れずに それより上を目指そうぜ
(からかわれた時嫌がると 次はターゲットになるから)

思い出そう取り戻そう Spirits of Teenage hart
(胸をはって歩いていたい Spirits of Gentle Land)

Ah あの頃お互い 恋の行方を朝まで話してた
(Ah TVをつけると悪口ばかりで素直には笑えない)

Ah そんな仲間達 今ではバラバラ行方も分からない
(Ah あふれるゴシップ ぼくらはだんだん嫌な奴になっていく)

1年1度は会いたいね 昔のように語ろうぜ
(電車に貼られた広告が その日の話題じゃ寂しすぎる)

忘れないでいつまでも Spirits of Teenage dream
(胸をはって歩いていたい Spirits of Gentle Land)

愛されないと悩んでいた俺達はもうすぐ30
(愛されたいと願っている ぼくらは真夜中のキッチンで)

愛され過ぎて困っていた○○○ももうすぐ30
(おなかをすかせて立っている 誰もが真夜中のストリートで)

中間テストで9点○○○○ももうすぐ30
(さそわれたいと待っている 弟はロッカールームで)

図書館でイビキかいてた○○○ももうすぐ30
(愛されたいと願っている ぼくらは夜明けのディスコで)

<台詞A> ウーウーウーウーウーウー(サイレンの音)
<台詞B>
やべぇ、警察だ!
<台詞C>
テル逃げろ!(ドタバタドタバタ)
<台詞D>
警防で殴らないでください
<台詞E>
やべぇ、テルが警防で殴られてるよ。
<台詞F>
僕も捕まえてくださーい。


あの頃は誰もが誰かを好きになり不器用に動いた
(偏差値ばかり気にしてると猫背がひどくなりそうだ)

奪えるもんなら奪ってみろ Spirits of Teenage hart
(胸をはって歩いていたい Spirits of Gentle Land)

大学落ちて困っていた○○○○ももうすぐ30
(愛されたいと願っている ぼくらは真夜中のキッチンで)

大学で女騙していた○○○○ももうすぐ30
(おなかを空かせて立っている 誰もが真夜中のストリートで)

自転車で下田目指した俺達ももうすぐ30
(誘われたいと待っている 弟はロッカールームで)

電話の台本書いていた俺達ももうすぐ30
(愛されたいと願っている ぼくらは夜明けのディスコで)

海老高ガンジーと言われた○○○○は只の悪人
(愛されたいと願っている ぼくらは真夜中のキッチンで)

こっそり女を見ていた○○ちゃんももうすぐ30
(おなかをすかせて立っている 誰もが真夜中のストリートで)

夜中に不法侵入俺達ももうすぐ30
(あやまりたいと悩んでいる 妹は公衆電話で)

あと4日で21世紀 俺達はもうすぐ30
(愛されたいと願っている ぼくらは歯車にもまれて)

<コーラス> 腹が出る 髪抜けるWo Wo
<コーラス>
ストーカー ストーカーWo Wo
<コーラス>
ストーカー ストーカーWo Wo



歌詞ができてしまったら、もうやるしかありません(笑)。

『1夜限り復活するエコーズに合わせ、僕らもひと晩だけ昔に返り戻り、20代の残り全てのエネルギーぶつけてこの歌を歌うぞ!』



4. レコーディング開始

 ライブの興奮冷めやらぬまま新宿駅近くのカラオケBOYに入りレコーディングの開始。録音機材を回すと、いつにない緊張感が漂うが、前奏ナレーションでのテルの思い切りの良い雄叫び

『でも、、、魂は、いつでもTeenagerさ!』

が僕らの緊張を一気にほぐし、僕らは高校時代にタイムスリップ。
『共に重ねた(真夜中の厚木の街を歌を歌いながら闊歩したりした)思春期の日々はダテじゃない!』と証明するかのように3人の息はピッタリと合い、まるでキャンディーズに匹敵するかのような絶妙なハーモニーを奏でレコーディングが終了。

こうして20世紀、そして僕らの20代は終わりを告げるのであった。

( ←四角をダブルクリックでナレーション15秒再生)

「もうすぐ30プロジェクト 完

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