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■ ペンションプロジェクト

昔、ペンション経営について考えていた事をまとめてみました。


1. ペンション経営の夢
 まっちとゆっちにはペンション経営をするという夢があった。
学生時代、あるペンションに泊まった時、そのペンションが属す「ジャパンペンション」 (現 カントリー イン)という組織のガイドブックをもらったのがそもそもの始まりだ。 特にそのペンションが気に入った訳ではないが、旅行好きのゆっちはそのガイドのスタンプラリー (宿泊毎に貰えるスタンプを集めると無料宿泊等のサービスが受けられる)が気に入り、 面倒臭がりのまっちは予約の手軽さが気に入り、旅行には決まってペンションを利用する様になった。
旅行中ペンションで旨い物を食べながら静かに時を過ごし、普段の生活では味わえないゆとりを味わった。 多忙で、非人間的な日常生活の合間に、ペンションでの豊かで潤いがある時間を織り混ぜ、日々の生活にリズムをつけて乗り切った。
宿泊を重ねるうちに、オーナー家族の個性がにじみ出た独自のサービスや工夫を見付けたり、オーナーの話を聞いたりする 別の楽しみも加わり、ペンション好きになっていった。

そんな中、あるオーナーの勧めで東北にある『森のゴリラ』というペンションに泊まった。 そのペンションのこだわりに満ちた、内装や外装、インテリアや小物の1つ1つが まっちのデザイナー心をくすぐった。 夕食も旨く、病院の管理栄養士をのゆっちは、普段自分が患者用に作る病院食とは違い、もてなしの心が現れた 料理に関心を持ったようだ。
その時からはっきりとではないが、将来ペンションをやりたいと思う様になった。



2. 目標を持って生きること
 日々の生活を充実させたり自分の能力を高めるには、短いスパンの目標と、長いスパンの目標の2つを掲げるのが良いと今までの生活で学んだ。
短いスパンの目標とは、例えば「1ヶ月後のレースに出場をする」といったすぐ目の前の目標で、絶えず この目標を掲げ続けていけば毎日の生活を充実させられる。
長いスパンの目標とは、自分の人生でいつか叶えたいと思う夢に似た目標で、 この目標を掲げ、目指していけば人生を充実させられる。


自分にとってペンション経営は、長いスパンの目標で、まだ具体的に動く時機では無いと感じている、 しかし、この目標を心の根底に忍ばせたお陰で、今まで興味の無かった分野への関心が広がり、 1級カラーコーディネーター、インテリアコーディネーター、2級建築士の資格を短期間で取得できた。 また、日々の生活に疲れた時に、この目標を思い出せばPOWERが湧いてくる。 ゆっちもお菓子の専門学校に通ったり、建築模型の通信教育を受けたり日々を充実させている様だ。



3. 伊豆の魅力
 独身時代、秋になると決まって伊豆の林道ツーリングに行った。
林道走行自体も楽しいが、一部のオフロードライダーと、登山者のみがたどり着ける、おそらく百年前から変わっていないであろう林道の奥の秘境が好きだった。 周りに人工物は一切見えず、バイクが壊れたら遭難するのではという不安の中、普段の生活では味わえない最高の気分を味わった。たまに林道の開けた所から見える景色からは、伊豆半島のかなりの 部分が手のつけられていない山脈で、人間が生息しているのは主要な道路の周辺のわずかな部分だけであると実感できた。 都心から約100キロという近場で、北海道に行った様な気分で週末の冒険を楽しんだ。

そんな訳で、伊豆にライダーのためのペンションを作りたいと考えていた時期がある。 ペンションにはバイク宿泊者が利用できるガレージを作り、工具を貸し出し、林道で破損しそうな部品をストックしておく。 必要があれば部品を林道まで届けたり、壊れたバイクを運んだりする。 ソロライダーが安心して林道を走れるサービスをしたり、仲間を求めるライダー同志は交流が取れるよう工夫する。 ペンションの壁には林道やバイクの絵や写真を飾り、レインコートや自作のバイク用品を販売する。 客のいない日は夫婦で林道を探検し、宿泊客にプレゼントする最新情報の載った伊豆半島林道マップ作りに励む。

そんな暮らしを本気で考えた時期もあったが、伊豆の林道のほとんどが閉鎖され、この計画は暗礁に乗り上げた。
現在は妻子持ちとなり、家族でできて、短時間で楽しめるモトクロスへと趣味を移したが、 いつか機会があればこの計画を再燃焼させたい。



4. オーナーの個性をどこまで出すか
 今まで色々なペンションに泊まったが、オーナーの個性をどこまでペンションに反映するかには注意が必要だ。
自分は基本的にはオーナーの趣味、志向がにじみ出ている個性的なペンションが好きだ。 たとえ、その趣味、志向が自分の感性に合わなくても今まで知らなかった世界を知るのは刺激的で楽しい。 だが、オーナーの趣味、志向は決して押し付けであってはならないと思う。

そう強く思うのは、昔北海道ツーリングに行った時、ライダーハウスで嫌な思いをしたからだ。
その日は豪雨に見舞われ、連日の長距離移動とキャンプ生活の疲れのためラーメン屋の主人が ボランティアで経営するというライダーハウスに泊まる事にした。 無料で泊れるというその宿に到着すると、ほとんど強制的に一番高いラーメンを注文させられた。その上募金と言いながらもこれまたほぼ強制的に 1000円を支払わされた。まあここまでは許せるのだが、ライダーハウスのオーナーが自分の話を延々と聞かせたり、宿泊者全員に、強制的に 話をさせるのには戸惑った。オーナーは親切心の様だがその日の疲れ果てている自分にっとてはどうしようもなく苦痛だった。テントを張らずに ライダーハウスで楽をしようと思った自分を後悔し、オーナーの話を聞いている振りをしながらその場所からの脱獄方法を考えていた。 朝方ようやく開放されたが、寝袋にもぐり込みながら、自分がオーナーになったら絶対宿泊者に強制はしないと誓うのであった。



5. ペンションでの苦い思い
 ペンションには当り外れがある。自分が今まで泊まったペンションのうち、最も苦い思いをした時の話を書く。 (ジャパンペンションに属すペンションは割と当り外れが少ないので、始めての方にはお勧めです。)

伊豆の白浜で泳いだ帰り道、渋滞の列の中で将来ペンションを開くなら伊豆がいいと語り合っていた所、 丁度良く洋風でしゃれたたたずまいのペンションと、空室ありの看板が目に飛び込んできた。 そのタイミングの良さに日帰りの予定を変更し、ふとこのペンションに入ってしまった。(これが大失敗)

部屋に案内され、まず感じたのが、建屋の防音性の低さである。
ドアの開閉音や足音が聞こえるレベルを通り越し、隣の部屋の会話まで聞こえてくる。 ちょっと不安を感じつつも、夕飯までまだ時間があるのでこの宿の売の天然温泉の露天風呂に入った。 この露天風呂だけは、なかなか良かったが、この宿でくつろげたのは、唯一この時だけだった。

夕食の時間となり食堂の席に着いた。本日の宿泊者は、テニス系サークルの大学生約15人と カップルが4組で食堂は満席である。 メニューはコース料理だが、夫婦2人で調理と給仕をしている様で、なかなか料理が運ばれてこない。 やっと来た料理も、ほとんどが冷めていて量が少ない。
自分はペンション経営の厳しさについて、ある程度分かっているつもりだったので、 最初のうちは怒るゆっちをなだめていたが、料理がファミレス以下の出来映えで、ことごとく旨くないのには怒りが込み上げ、 気付けば自分がゆっちになだめられていた。

夕食後、目の前が海だというロケーションだけは最高だったので気分転換に砂浜で花火をした。 あらためて外からこのペンションを眺めてみると、表通りに面した1面だけは、美しく作 られているが、その他の面はプレハブの様な作りだった。どうりで防音性能が低い訳だ。

夜も遅くなったので部屋に戻りベットに横になった。布団がちょっとホコリっぽいのも気になるが、 何より下階の団体客がうるさくて眠れない。 自分も学生時代逆の立場で迷惑をかけた記憶もあるので、始めのうちは大目に見ていたのだが、午前1時を過ぎても 廊下を走り回りながら奇声を発したりする状況は全く治まらない。オーナーに注意してもらおうとしたが、 オーナー夫婦は別の場所に住んでいる様で、この建物内には何処にもいない。

ペンションは日常の雑踏から離れ、静かに時を過ごす場所というイメージがあるためこの状況はどうも許し難い。 隣の部屋のカップルが、うるさすぎるよ−と言っている声も聞こえる。 自分はかなり温厚の部類に入る人間だが、その時ばかりは堪忍袋の緒が切れた。 『うるさい!』大きな声で怒鳴ると辺りは急に静まった。

朝食がまた最悪だった。
大学生達は、回りを見回し、昨晩怒っていたのは誰かを探している。 そんな中、隣のカップルの男と目があった。その目は『お前はよくやった』と語っていた。

この旅行では見せかけと、本物について考えさせられた。



6. ペンション冬の時代
 バブルが弾け、景気が悪化するに従いペンションを取り巻く環境にも暗雲がたちこめた。
あるオーナーの話では、昔はホテルと民宿の宿泊料金に差があり、そのすき間がペンションの生息域だったが、 デフレでホテルが宿泊料金を下げた今、ペンションは料金設定を下げづらいく、構造的に生き残れなくなっ てきているそうだ。かなりのオーナーが、ペンションの収入だけでは食っていけず、宿泊者がいない日に 別の仕事で収入を補っているという話も聞いた。
そんな状況の中ペンションを始めるのは荒海に乗り出す覚悟が必要のようだ。



7. 他人をもてなす事に喜びを感じられるか
 自分がペンションで受けるサービスを裏返しに考えると、ペンション経営が大変なのは容易に想像がつく。
昼間ひっそりと工事現場に仕事に出掛けるオーナーを見ていたらある疑問が浮かんだ。
『自分の子供の面倒もろくに見れない自分に、果たしてペンション経営ができるのか?』
夕食の時間に遅れて到着しても嫌な顔1つせずフルコースの料理を用意してくれたり、 雪の積もった日、僕ら1組の客のために駐車場から公道までの雪掻きをしてくれたり、 ゆっちが花好きだと知ると早朝に花を積んできてくれたり、、、。 こんな風に献身的にサービスをしてくれるオーナー達を見ていると、
『ペンション経営は、他人をもてなす事で喜びを得られる人でないとやっていけない』と感じた。 そして重大な事実に気が付いた。
『自分は他人をもてなすのは好きではなく、単にもてなされるのが好きなだけだったんだ。』



8. ペンションに何を求めていたか
 自分がペンション暮らしで何をしたいのか、それを満たすにはペンション経営 しか方法は無いのかをもう1度考えてみた。

・夫婦で共に働きたい
夫婦別々の職場で働いていたため、夫婦で共に汗を流して思い通りに働ける点に魅力を感じた。
子育という共同作業をしている今、その魅力は半減した。(そもそもゆっちは子供が大きくなるまで働けないし、、、。)

・自由な時間を持ちたい
自由時間がほとんど取れず、なかなか家族の顔も見れない生活に疑問を持った。ペンション経営で、時間に 余裕のある生活を送りたい。
時間的な不満は解消しそうだが、副業をしたり収入が激減する様では意味が無い。

・潤いのある生活を送りたい
ウインダムヒルレーベルの音楽が流れる生活感の無い部屋で、静かにコーヒーを飲みながら過ごす至福のひととき。 ペンション暮らしでこんな時間を持ちたい。
ペンションをやらなくとも、自宅にそんな部屋をひと部屋用意すれば今の生活でも優雅な気分を味わえる。
★自宅にステレオと椅子しか置かない生活感の無い部屋を用意!(数カ月間優雅な気分を味わった。しかし今では子供の 魔の手を避けて避難してきた電化製品や家具がその部屋に運ばれ物置き状態となった。)

・自然の中で暮らしたい
妻や子供達と自然を味わいながら暮らしたい。
本当に厳しい自然の中での暮らしを望んでいるのだろうか? 今の生活でも、休日にファミリーキャンプに行く等で、、良い所取りで自然が味わえる。
★ファミリーキャンプを新しい趣味にする事に決定!

・コミュニケーションをはかりたい
ペンションから情報を発信したり、同じ趣味や感性を持つ人とコミュニケーションを交わし、刺激を受けながら生活したい。
インターネットが一般的になり、簡単にコミュニケーションが交わせる様になった。 ホームページを立ち上げれば情報の発信も安価で容易。
★ホームページを立ち上げ決定!(それがこのホームページ)



9. まとめ(ここまで読んできてくれる人はどれ位いるのだろうか?)
 2人の子供を育てる事を選んだ今、ペンション計画を実行に移すのは難しそうだ。 あまり実現に結びつかない夢ばかり考えていてもしょうがないので、上記の様にとりあえずホームページ作成や、 ファミリーキャンプ等、今できる事に取り組みながら機会をうかがっていこうと思う。

このところ月10万円台前半の家賃なみの賃貸ペンションや、格安の中古ペンションの物件が出回っている様だ。今ペンションを始めるのは厳しそうだが、 子供達が巣立った後、宿泊客が来なくても生計が成り立つ様な賃貸物件に移り住み、忙しくない程度にお客(や友人)を 泊めて生活する位になら実現できそうだ。 その時は、ダートスポーツに広告を載せるので、みんな遊びに来てね。随分先の話だけど、、、。 (その頃にはダースポもガルルも無くなってそうだぞ。)

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