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12. 富士山1周サイクリング編  

2013年春、富士山が世界遺産登録されたので、、、

1.失意のサイクリング( 2013年10月13日
 富士山が世界遺産に登録された記念に是非とも富士山観光お泊りサイクリングに行こうとテル、ゴッチャンと計画に着手。
特急あさぎりで御殿場駅まで輪行し、2日間で反時計回りに富士山を周るプランを立てて当日を迎えるも、天候不良により中止となってしまった。

 

振替日を探すも、寒くなる前に2日間の予定を組むのは難しく、計画を来年に先送りするしかないとあきらめかけるも、『待てよ、車に自転車積んで早朝に出発すれば1日で周ってこれるんじゃないの?』と走行ルートを再検討。

観光を絡めつつ富士山をできるだけ短い距離で周ろうとすると約120kmの行程となる。途中、御殿場〜山中湖間の籠坂峠と、富士宮〜御殿場間の愛鷹山の2カ所に長い上り坂があるがどちらも恐れる程の急勾配ではなく、観光に時間を割き過ぎなければ何とか1日で周れそうだ。

「日帰りなら来週行こう!」

やる気満々のテルに押し切られ、今回もこのところの定番「暇人コンビ」で出掛けることとなった。

富士山1周1 富士山1周2 富士山1周3

早朝3時に自宅を出発、途中でテルを拾い、5時過ぎに御殿場駅市営駐車場に到着。暗闇の中、ライトを点けて籠坂峠を登り始める。

自転車に乗るのは春の東北四寺回廊サイクリング以来なので前半から飛ばすと後半膝痛に泣かされそうだと、軽いギアでペダルをクルクル回しながらのマイペース走行。

暗闇から次第に浮かび上がる間近で見る富士の眺めに目を奪われつつ峠を半分程上る。雲ひとつ無い青空に『最高の1日になりそうだ!』と封印していたフロントアウター側にギアを入れた瞬間に悲劇は起きた。ガツッ!と大きな衝撃とともにいきなりペダルがロック、投げ出されるように落車。
富士山1周4 富士山1周5 富士山1周6

『じぇ じぇ じぇ!やっちまった!!』

前回この自転車を使った東北旅行の帰り道、輪行袋越しにリアディレイラーを地面に強打しつつ何もメンテをせずに今日の日を迎えてしまっていたことを思い出すも後の祭り。チェーンは無惨にも切れてしまい、まだ1時間も走っていないというのに走行不能となってしまった。

富士山1周7 富士山1周8 富士山1周9

先行するテルに携帯で事情を伝えると、

「まっちが走れないなら富士山1周は次の機会に取っておいて、今日は甲府のT君の店にとんかつ食いに行こうか?」

とありがたきお言葉。テルにはそのまま自転車で走り続けてもらいつつ、チェーンの無い自転車で市営駐車場に引き返して車でテルの自転車を追いかける。御殿場から山中湖への道は渋滞で麻痺しているため、富士スピードウェイをかすめるルートで迂回しつつ東富士五湖道路を使い、11時過ぎに河口湖畔の道の駅「かつやま」で合流。

「いやー、まっちには悪いけど山中湖畔のサイクリングロードから見る富士山は最高たったよ!」
富士山1周10 富士山1周11 富士山1周12

清々しい表情で何度も土産話を語るテルを助手席に乗せ、甲府のT君のとんかつ屋を目指し御坂峠を車で超える。山頂のトンネルを抜けると思った通りのテルの発言。

「この先甲府まではほとんど下り坂なので自転車で走りたいんだけど、この辺りで降ろしてもらえるかな?」

まあ自分が逆の立場ならきっと同じことを言うだろうとテルを下ろして別々に約20キロを走行。13時過ぎに(実は先週も来た)高校同窓生T君の経営する「かつみ食堂」に到着。

まっちゴール レース後1 レース後2

座敷でおいしいトンカツを頂きながら、まるで同じ学校に通っていたかのように上手に話しを合わせてくれる奥様を交えたりしながら、昔話や、子育て話、今後のヨット合宿の話に花が咲く。あっという間の楽しい3時間であった。

マシントラブルで富士山1周ができなかったのは残念であったが、T君とのんびり話ができたし、車を利用した新しいサイクリングの形も発見できたので良しとしよう。

〔後日談〕
チェーン切断の原因を詳しく調べてもらおうと、近所のワイズロード府中多摩川店に自転車を持ち込むと、フレームとリアディレーラーを繋ぐ「ハンガー」という部品の変形が致命傷であったと分かる。だが、他店のオリジナル自転車のハンガーの在庫は無いと修理を断られてしまい、後日この自転車を購入したサガミサイクルに自転車を持ち込む。販売終了後5年以上経過しているこの自転車のハンガーはもう手に入らないが、この程度なら修正可能であると曲がったハンガーを再使用(アームの曲がったリアディレーラー(SORAの旧型品)を現行のSORAに交換)。しばらくは注意して走った方が良さそうだぞ。



 

2.富士山1周再チャレンジ( 2014年4月27日) NEW
 チェーン切断により富士山1周を断念した苦い体験から半年が経過。

『このまま富士山1周をあきらめる訳にはいかない、、、。』

前回と同じ早朝3時に車に自転車を積んで自宅を出発。途中でテルとゴッチャンを拾い、5時過ぎに御殿場駅市営駐車場に到着。
熟女キラーのゴッチャンが地元の小さな婆さんに「あら、この人だけ普通の自転車だねぇ。」と逆ナンされたかと思うと話し込んでしまい、テルの作った分刻みのスケジュールを大幅に遅れ、冠雪のある富士山を左に眺めつつ、箱根裏街道を北西方向に走りだす。

富士山1周1 富士山1周2 富士山1周3

娘が好きだというMr.Childrenの3枚組ベストをiPodで流しながら走ること15分、最初にして最大の難関「籠坂峠」に差し掛かる。傾斜はそれほどではないが、だらだらと続く長い坂を各々のペースで上り、須走登山口で休憩をするが、最後尾のゴッチャンが30分経っても追い付いて来ない。

『あの自転車にあの家出人のような荷物じゃこの坂キツイかもしれないね。』
「ゴッチャン、はぐれるとやる気無くして歩いちゃうからなぁ。これ以上遅くなると完走が難しくなるからゴッチャンに先頭を走ってもらおう!」

ここからはテルと後ろから「がんばれ!」「サボるな(笑)!」と声援を送りつつ3人で連なって坂を上る。前回のリアディレーラートラブルの再発も無くひと安心。7時40分、朝陽を浴びてキラキラと輝く山中湖に到着。

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『ゴッチャン、ドロップハンドルもビンディングペダルも無いマシンで良く頑張った。あとは最後の愛鷹山塊まで下り基調だから楽勝でしょ!』

観光地の賑わいを見せる湖畔を散策の後、R138を河口湖方面に向かう。富士急ハイランドを過ぎると(ふじてんや本栖湖の行き帰りによく通る)富士パノラマライン(R139)の見慣れた景色が目に入る。東名高速御殿場インター近くにいるつもりが、いつの間にか中央道エリアに来ているのが何だか不思議な感じ。道の駅「なるさわ」で、富士山博物館を観て、湧き水やヨモギ餅、焼き鳥を味わいながらひと休み。

本栖湖へ向かうこの道を車で走っている時には意識しなかったが、道の両側には青木々原樹海が拡がっている。木々のざわめきに誘われるかのように樹海に足を踏み入れたりしつつ、11時頃馴染みの本栖湖に到着。ヨットが無く手持ち無沙汰のせいか湖畔はいつもより穏やかでのんびりとした印象。芝生に寝転びヒラヒラと散り行く桜を鑑賞。

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富士ヶ嶺オフロードコースの近くを走っていると、車道には富士芝桜まつりの駐車場渋滞の列。せっかくなので芝桜を見に行くも満開には程遠くイマイチで、長居せずに先を急ぐ。

これまで富士山をこちら側からじっくり眺めたことは無かったが、周りに全く人工物が全く無い中にどっしりと構える富士山は感動もの。おそらく数百年前に生きていた人も全く同じ景色を見ていたと思うと、時の重さに涙が出そうになる。

12時20分、道の駅「朝霧高原」に到着。しぼり立ての牛乳と富士宮やきそばを味わうと眠気に襲われ芝生でゴロゴロ。テルとゴッチャンが「あれ、まっち本当に寝ちゃったんじゃない」と言うのを半分夢の中で聞きながら1時間を超える長めの休憩。

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この先は長い下り坂が続き、牧場や菜の花畑、草原やパラグライダーを横目に快調に飛ばす。朝霧高原で3時間あったスケジュールからの遅れは白糸の滝到着時には2時間に短縮。

新しくなった滝見橋を渡り、間近で見る白糸の滝は水しぶきとマイナスイオンが飛び散る異空間。日本観光百選滝の部第1位は伊達じゃない。

 

御殿場駅まで残り約40km、15時を回ったばかりだが、最後に愛鷹山塊が立ちはだかるので、あまりのんびりしてはいられない。
県道72号の小さなアップダウンを繰り返し、急坂がはじまるR469手前でエネルギー補給していると、少し遅れて到着したゴッチャンが印象的なひとこと。

「やったー、これで最後の上り坂終わりでしょ!」
『違う、違う、残念ながらこれから標高差400mの最後の難関がはじまるんだよ!』

複雑な表情のゴッチャンに大爆笑。気力の低下を音楽の力で補おうと、Mr.Childrenで最も力が入りそうな終わりなき旅をバックミュージックとしてリピート設定。

♪難しく考え出すと結局全てが嫌になってそっと逃げ出したくなるけど 高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな まだ限界だなんて認めちゃいないさ

と歌詞を口ずさみつつ、戦友のような2人と共に最後の難関に立ち向かう。

まっちゴール レース後1 レース後2

基本的に上り坂は嫌いだが、季節の節目節目にこうして最高の仲間と最高の景色の中で、自分の体に年輪を刻み込むかのように上る坂道は嫌いではない。ペダルを踏んだ分だけ確実に目標までの距離が縮まっていくのは何とも気持ちのいいものだ。

♪閉ざされたドアの向こうに新しい何かが待っていて きっときっとって君を動かしてる いいことばかりでは無いさ でも次の扉をノックしよう もっと素晴らしいはずの自分を捜して

富士山こどもの国辺りから、また一段と傾斜がキツくなる。坂道を辛いと考えると本当に辛くなってしまうが、歌詞に影響を受け、「この坂を越えた先にはきっと素敵な未来が待ち構えているはずだ!このペダルを踏み続ける行為は、新しい自分に生まれ変わる為の試練なんだ!!」と都合良く考え最後の力を振り絞る。

♪胸に抱え込んだ迷いがプラスの力に変わるように いつも今日だって僕らは動いている 嫌なことばかりではないさ さあ次の扉をノックしよう もっと大きなはずの自分を捜す終わりなき旅♪

何とか坂を上り切ると、草原の向こうに沈み行く太陽と暮れ行く大地。

『最後にこんなご褒美が待っていたとは!!!』

気分はドラマの主人公。坂を上り切った達成感や高揚感に浸りつつ、♪誰の真似もすんな 君は君でいい 生きる為のレシピなんて無いさ♪という歌詞を噛み締める。この瞬間、仕事や家族さえも忘れ、自分の体が空に浮かんでいるような不思議な感覚。今日この道を走って本当に良かった。

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テルとサークルK裾野須山店で合流し、暮れなずむR469を北東へ。全国的に有名な山崎精肉店で肉汁たっぷりのメンチカツを食べ、18痔30分、朝とは逆方向から御殿場駅駐車場に無事帰還。1度失敗しているだけ大きな達成感。最後にゴッチャンが

「やったー、何とか還ってこれたよー!」

と最高の笑顔を見せてゴールイン。拍手で迎え、全員で富士山1周できた喜びを噛み締めつつ御殿場を後にする。

「足動かないんだけど、段々暗くなってくるし、立ち止まれば遭難するんじゃないかと思って夢中で走ったよ!」

いつになく饒舌なゴッチャンの武勇伝を楽しく聞きつつ東名を飛ばして帰宅、長く楽しい1日は終わりを告げた。

【走行データ】
走行時間:7時間25分  走行距離:117キロ   平均スピード:15.7キロ

【To be continued.】