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■ 3輪車レースプロジェクト(2013年3月17日)

(1)参戦決定
 家の片隅で埃をかぶっている子供が乗らなくなった幼児用自転車や一輪車を処分するために車で1時間の距離にある環境センターに行こう行こうと思いつつ重い腰を上げれぬうちに1年が過ぎてしまった。
環境センターの開館時間は短く、この先も全く捨てに行く見通しが立たぬため、これら粗大ごみをゴミ袋に入るサイズに分解して一般ゴミとして捨てようと分解作業開始。手伝いに来てくれたそうちゃんに工具の使い方を教えながら一緒に作業を進めるうちに、自転車フレームのステアリングヘッドの穴に三輪車がピッタリ収まるのを発見。脳内が騒ぎだす。

『この2台を組み合わせれば、富士スピードウェイ改造三輪車レース用のマシンが創れるかもしれない!』

ゴミの山 自転車分解 部品比較

改造三輪車レースを知ったのは、数年前に同サーキットの人気イベント「スーパーママチャリグランプリ」に出た時だった。その時は具体的な行動を起こすには至らなかったが、怪我のリスクが極端に低く、大人と子供が一緒になって全力で挑めそうなこのレースは家族や友人を誘って参加するのに丁度良く、いつか機会があれば出たいと考えていた。

話題のCM 「いつやるの?」 『今でしょ!』 に背中を押され、親友テルに『面白そうだからやってみようよ!』と声をかけると、

「いいねぇ。じゃあ今週末マシン造り手伝いに行くよ!」

といつもながらの期待以上の反応。こうして改造3輪車レース(今年からWEC(ワールドエコノミカルカーチャンピオンシップ)と改名された)に向けての日々がはじまった。

 

(2)事前準備 (前編)
 週末になりテルとアクアブルー多摩で落ち合い子供達をプールで遊ばせた後、近くのホームセンターでφ10の全ねじ棒とナットを購入し改造三輪車の製作開始。自転車前後輪軸径の違いやインチネジに悩まされながらも1時間程で乗れる状態に組み上げて試乗会を開始。小学生達(と自分)の好評を得るも、身長185センチのテルは渋い表情。

「う〜ん(渋)。俺にはこれでもまだ小さいなぁ。」

彼の長過ぎる足はハンドルにぶつかりペダルがうまく回せないようで、現状のサドルの後方に大人用のサドルを併設できないかを検討。シートポスト着脱タイプの荷台を流用した大人用サドルを取り付け、「これなら大丈夫だろう!」とシートにまたがると(シート位置がリアタイヤより後ろになってしまったせいで)三輪車もろとも後ろにひっくりってしまう。
φ10のリアシャフトの強度不足等他にも問題は山積みだが「まだ3ヶ月あるから何とかなるでしょう!」とマシン製作終了。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

次の課題は、(一見無意味そうで、良く考えてもやっぱりたいした意味があるとは思えない)3輪車レースに賛同してくれる物好きのメンバーの確保だ。もの言わぬ子供動員という最近の常套手段を駆使して8名(テル、i君、まっち、ゆっち、テル三男(小4)そうちゃん(小3)、i君長男(小1)、i君次男(年長))を集めるも、「俺は話のネタに1周走れればいいや。」とか「バーベキューは楽しみだけどレースはちょっと、、、」など皆極めて消極的。

「上位を狙いベストを尽くしてこそ楽しさも倍増する!」という考え(皆のしわ寄せで自分が数時間走らねばならなくなる不安)があり、アスリート業界で生きるナミオチャンと底無しの体力を持つ同僚アメさんに参加をお願いし、レース規定上限の10名でレースに挑む体制を整え申し込み手続きを完了させた。

 

(3)事前準備 (後編)
 レースの1週間前になりマシンの最終調整に着手。モトクロッサー用スタンドの上半分を使いフレームを延長して尻餅現象を解消するも、焼き入れが入ったφ11の軸穴径を拡大できずに後輪軸強化は暗礁に乗り上げる。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

困難な軸穴加工をあきらめ、φ12の軸を通せるタイヤ等(必要金額約5000円)を買って問題解決しようかとテルに相談すると、「中途半端に金をかけるより廃品利用のコンセプトを貫いたままがいんじゃないの?」という意見。「遊びにおける多少の不安要素や未確定事項は、乗り越える喜びや新しい発見に繋がるスパイスとなる」というこれまでのプロジェクトで感じた教訓(=準備が面倒になった時の都合のいい言い訳)を生かし、この車体でレースに挑むと決めた。

 

(4)レース当日
 スタート1時間前に快晴の富士スピードウェイカートコースに到着。車検を通したマシンを仲間に披露、順番に試し乗りをしていると、僕の体重ではしなるだけだったリアシャフトが曲がってしまう。

『ナミオチャンとアメさんの体重が僕より重いの忘れてたよ(汗)!』

リアタイヤに若干のキャンバー角がついた状態で変形は収まったものの、軽量の子供がペダルを高速回転した時にリアタイヤがバタバタと暴れて走行不能となる現象が発生。深刻な事態に途方に暮れていると、オープンカーに乗った子連れのi君が登場。

「念のため家にあった三輪車持ってきましたけど使います?」

渡りに舟とばかりに急遽i君の市販三輪車を予備マシンとして登録、これでメインマシンが走行不能になってもリタイヤだけは避けられるぞ!

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

メインマシンのリアタイヤと固定ナットの間隔を限界まで縮めれば暴れ現象を抑えるられるのではないかと調整作業をはじめるとほぼ同時にレースの招集がかかる。調整効果の確認する間もなく発起人の自分が第1ライダーとしてスタートラインに並ぶ。全員がコースを走れぬうちにマシンが走行不能となる最悪の事態だけは避けたいと、「一巡するまでにマシン壊したら罰金1万円!」とルールを定め、レーススタート。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

チェッカーフラッグが振られ全車一斉に走り出す。せめてはじめだけでも上位に食い込んで走ろうと全力でペダルを回すが、他車より格段に小さい前輪と長いクランクの組み合わせが最悪で、ペダルを高速回転するも周りのスピードに付いて行けない。リアタイヤに横Gがかからぬよう慎重に第1コーナーを回ると、その先は緩い下り坂。他のマシン同様ペダルから足を離し、惰性で走ろうとするも、後輪軸にベアリングを装備していない影響で自分のマシンだけが大きく減速(フリーホイール機構を備えたマシンはペダルから足を離さずとも車輪が空転しスムーズに加速)。その後もマシンの低ポテンシャルに泣かされつつ2周回して第2ライダーのアメさんにマシンを託す。
途中ペダルが外れてピットインするも、アメさん、ナミオチャン、テル、i君、ゆっちと順調に周回を重ね、1時間程で無事大人の1巡が終了。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

子供達には予備マシン(i君が持って来てくれた市販3車輪車)でまずは走ってもらおうと、メインマシンのゼッケンと発信機を予備マシンに付け替え、そうちゃん、テル三男、i君長男、i君次男が順番にコースイン。
1周520mの国際コースをそのまま縮小したようなカートコースは、ピットに居ながらにして全体が見渡せるため、子供達がどこにいても目が届くのがいい。レース開始から1時間半が過ぎた頃、子供の一巡も無事終了、メインマシンに戻し、余力のある者から2巡目に突入。子供達の緊張もほぐれたようで、グッと和やかな雰囲気となる。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

順位はクラス最下位。ナミオチャン、アメさんの2トップに懸命に頑張ってもらうがマシンの歴然とした性能差にレースは膠着状態。

レースを観戦しつつ、コース傍で子供達とサッカーをしたり、昼飯(おでんとラーメン)を作って食べたり、皆が持ってきてくれた大量のお菓子やコーヒーを片手におしゃべりしたり、衝突防止用巨大スポンジに寝転び昼寝をしたりと、レース中とは思えぬ長閑な時間は過ぎていく。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

残り90分を切ったところで、メインマシンリアシャフトがぐにゃりと曲がるトラブル発生。急遽子供達を招集し、

「パパ達のマシン直すまで、子供達で力を合わせて走ってもらえないかな?」

とサブマシンを差し出すと、一致団結して頑張ってくれる子供達。その間試行錯誤しながら予備部品を使ってメインマシンを復旧。なんだかレースらしい雰囲気になってきたぞ。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

復活を遂げたメインマシンの仕上がりは良好で、時折他車を抜き去るアメさんとナミオちゃんの活躍にピット内は沸き上がる。普段ほとんど闘争心を見せないそうちゃんが意外にも熱くなり、何度もモニターまで走り順位やタイムを確認しては、「前のチームとの3周差が2周差になった!」とうれしそうに報告してくれる。

「もうマシンの強度気にしないでいいから、最後の1周はみんな全力で行こう!」

1周ずつの全力疾走で怒濤の追い上げを見せるも、改造三輪車クラス8位/8台(周回数59周)でレース終了。最終走者となったそうちゃんがチェッッカーを受けゴールインした直後に、前走者「チームドM」のほぼ生まれたままの格好のお兄さん達と記念撮影。鏡に向かい色々研究しただろう洗練されたポーズに脱帽。

三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗

今回参加したWEC(改造三輪車レース)は何と言っても子供から大人までが全力を尽くしてレースに挑み、楽しめたのがとても良かった。 順位はいまいちであったが、大人と子供が持てる力を出し切って叩き出した感のある59周、30.68kmという走行距離には大満足。「最後に表彰台の真ん中で写真撮ろうよ!」と記念写真を撮り会場を後にした。
三輪車試作1 試作1号完成 てる試乗
[3輪車レースプロジェクト 完(?)]