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3. 多摩川サイクリング 編

 自転車を家族共通の趣味にすることができるのか?




1. 多摩川サイクリング (2008年4月29日)
 母校自転車愛好会の人数は、激しい勧誘により(笑)12人となった。とりあえず近場のサイクリングロードでも走ってみようと多摩川サイクリングを企画、実行に移した。
電車でまっち家まで来てくれたゴッチャンに通勤用のなんちゃってマウンテンバイクを貸し、家から約10キロの多摩川サイクリングロード沿いにある自転車屋「ワイズロード府中多摩川店」で、まっち同様今日自転車を下ろしたテルと合流。自転車愛好会発足記念の堅い握手を交わし、目的地である羽田の海を目指しサイクリングロードを走り出す。

15分程走った多摩川原橋付近に近所に住むジョーがマラソンで顔を出してくれ、4人で青空の下弁当を食べることにする。

『時間がゆっくりと流れるこの感じ、なんか高校時代に戻ったみたい。』

のんびりと雑談を重ねるうちに気付けばもう14時。 そろそろ出発しないと羽田まで辿り着けないと気持ちを新たに走り始める。

4月29日多摩川サークリング1 4月29日多摩川サークリング1 4月29日多摩川サークリング1

自転車を漕ぐ友人の懐かしい後ろ姿を追いかけながら、バーベキュー、野球、サッカー、テニス、ローラースケート、凧、ラジコン、合コン等、休日を満喫する人々で溢れた河川敷を駆け抜ける。

「ゴッチャンの乗るマウンテンバイク」、「テルのクロスバイク」、「まっちのロードレーサー」にはかなりの性能の違いがあるようで、負荷を皆で分け合うように自転車を交換しながら協力し合い、多摩川の水が海に注ぎ込まれる羽田のサイクリングロード起点に到着。ここからは羽田空港に遮られて一面に広がる海が見えなくちょっとがっかり。空港の第2ターミナル側まで行こうと言うテルの提案に賛同し後を追う。
しかし、数キロ走った所に「この先歩行者・自転車通行止」の看板、さらに数キロ走った所にも同じ看板があり、巡回中の白バイに目をつけられてしまう。 俺にまかせろと言わんばかりにテルが警官に話し掛ける。

「ヤバイ、警官嫌いなコイツに任せて大丈夫か?」

『税金でこんな高級車に乗れていいですね。うちなんか15年前のカローラですよ』とかつてスカイラインGTRに乗る警官を怒らせた彼の姿が脳裏を過るが、さすがにもう立派な社会人。穏やかに会話を済ませ、泣く泣くサイクリングロード起点に戻りひと休み。

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時計を見るともうすぐ16時。 朝家を出発して7時間が経過していることを考えると帰り道が不安になり、休みもそこそこに今来た道を引き返す。

国道1号線との交差点で輪行で帰るテルと別れた後は、暗くなる前に少しでも距離を伸ばそうと、人がまばらになった夕暮れのサイクリングロードをペースを上げてただひたすら走る。

黙々とペダルを回すうちに足の細胞が遥か20年前の記憶を取り戻し覚醒をはじめる。 朝ぎこちなかった足の運びが無駄を削ぎ落とした昔の足の運びを取り戻すにつれ、 かつて毎日この2本の足でペダルを回して高校に通っていた時代が存在していたことが実感として蘇る。
当時抱えていた悩みや望み、通学路のいつもの景色、当時履いていた靴や鞄の形等、記憶の湖に沈みもう2度と湖面に浮かび上がらないはずであった出来事が芋ずる式に浮かび上がる。

黄昏のサイクリングロードを川上に向かうことが、まるで過去へと時間を巻き戻すことのように感じられる不思議なひとときであった。

4月29日多摩川サークリング7 4月29日多摩川サークリング8 4月29日多摩川サークリング9

気がつくと、多摩川と小田急線が交差する登戸駅付近まで来ていた。サイクリングロードに別れを告げて世田谷通りに進路を移し、歩道や車道の端を走り19時頃まっち家へ到着。疲れ果てた様子のゴッチャンはこんな名言を吐いた。

『これ、自転車愛好会じゃないよ、部だよ、部活!』

風呂上がり、ここ数年の運動不足でプニョプニョになってしまったふくらはぎがちょっと固くなっていることに気付く。
もしかして自転車は、心も体も若返らせてくれるタイムマシンなのかもしれない。

【本日の走行距離96キロ、平均時速15.7キロ】


2. ファミリー自転車生活始動
 自転車愛好会で多摩川サイクリングロードを実際に走ってみて、車を気にせず快適に走れるこのサイクリングロードこそ家族ではじめて自転車に乗るのにぴったりだと感じ、ゆっち(妻)、なっち(娘)、そうちゃん(息子)に

『ねえ、家族で多摩川サイクリングロードを走破しようよ!』

と言いかけ、慌てて声を押し殺す。

家族で同じ趣味を楽しもうと、意気込みや思想を大声で語り、楽しみ方を実演し、全力で家族を巻き込んだつもりが、うまくいかなかったモトクロスの二の舞いを演じないために、失敗の原因を究明して戦略を練り慎重に行動を起こした方が良さそうだ。

考えること約1時間。モトクロスでは熱意を大声で語り、家族を引っ張るように先頭を切って行動を起こしたが、最も準備の整っている自分がはじめに楽しんでしまうこの方法は、まだ充分に関心を持っていない家族を巻き込むには適切とは言えなかったようだ。

自転車では、熱意はあまり多くは語らず、まずは家族のやる気を充分に引き出すことに力を注ぎ、十分にやる気が伝染してから、家族を後からサポートするように取り組む方法を取ってみよう。

名付けて『背中押し大作戦』果たしてうまくいくかな?



3. 背中押し大作戦その1(ゆっち編)
 自転車を家族の趣味にできるかどうかは、まっちファミリーの影の支配者であるエンペラーゆっち(嫁)を自転車ワールドに引き込めるかどうかにかかっていると言っても過言では無さそうだ。
ゆっちの気持ちを自然に自転車に向ける良策を考え抜いた末、 新婚当時2人でよく口にしていた『活き活きとした健康的な生活』という求める夫婦像のキーワードを持ち出し、この求める生活(be ニーズ)を実現する手段として自転車を位置付ける3段論法を展開すれば良い形でゆっちの関心を自転車に向けられそうな気がしてきた。その3段論法とはこうだ。
1段階
(be ニーズ)
子供が活発になってきた今こそ『活き活きとした健康的な生活』を家族4人で実現しようではないか!
2段階
(do ニーズ)
そのために、家族4人で体を動かせる趣味のようなものを日々の生活に取り入れようではないか。
3段階
(have ニーズ)
その手段として家族で自転車をはじめるのなんてどうだろう?


この3段論法をゆっちに説明する際、最も注意を払ったのが「自転車ばかりをアピールし過ぎないこと」だ。
『活き活きとした健康的な生活』を実現したいという欲求(be ニーズ)の説明に充分に時間を割き、それを実現するための手段である自転車には全く拘わらない態度を示しつつ、「テニスでもジョギングでも何でもいいけど、例えば自転車なら家族4人が一緒に楽しめそうじゃない?」と、最後に付け加えるようにさりげなく自転車を勧めてみた。

この、いつに無いさりげなさが功を成したのか、ゆっちが自転車に関心を示しはじめたので「とりあえずサイクリングロードを走る人達を見てみよう!」と、子供の川遊びがてら多摩川河川敷に弁当を持って出掛けた。体を動かすことの好きなゆっちは自転車の多さに驚きつつも、健康的に汗を流すサイクリスト達の姿に好印象を持ったようだった。

4月29日多摩川サークリング1

さらにまっちの攻勢は続く(笑)。
書店で女性ロードレーサー乗り兼東大卒タレントの絹代(サイクリストの間では有名な人らしい)が女性の視点で書いた「自転車でカラダとココロのシェイプアップ」をさりげなくプレゼント。
奮闘の甲斐あり、エンペラーと多摩川サイクリングロードを走りに行く約束を交わすことができた。


4. 背中押し大作戦その2(なっち編)
 なっち(娘)はまっちがニヤニヤしながらバイクや自転車をいじる姿を見て育ったせいか、自然と自転車好きになりつつある。なので敢えて自転車に気持ちを向けるために背中を押す必要は無さそうだが、なっちがどれ位自転車に乗れるようになっているかを把握しようと、近所のスーパーへプチ買い物サイクリングに誘い行ってきた。

(運動が得意ではない)なっちの体力には全く期待していなかったが、小学校に通うようになり少しは体力や気力がついたようで、1年前には手も足も出なかった坂道を、息を切らしながら懸命に上るようになっていた。

『なっち自転車凄く上手くなったじゃん!』

と、オーバーに誉めると気を良くしたなっちは、帰宅後に家の前の1区画(1周約200m)でレースをやろうと挑戦状を送りつけてきた。せっかくなので、なっちが2周、パパが3周のガチンコバトルをすることにした。

『よーい、ドン!』
下り坂ではほとんど差がつかないが、上り坂ではロードレーサーとギア無し18インチの差は歴然でグングンと差が開き、なっちが2周目に入ったすぐ後ろでまっちは3周目に突入した。このまま一気に追い抜いては面白くないので、

『おっと、もうパパが後ろから来ています。あと5m、3m!』

と古館伊知郎ばりの実況中継をしつつ、背中に闘志の炎を燃やすなっちを観察しながらゴール直前で抜き去りレース終了。

『なっち、もう少しだったな!』

悔しがるなっちの挑戦に応えて2回戦。
何度やっても結果は同じだとスタートするが、リベンジに燃えるなっちのスピードは前回よりも上がっているようで、1回戦目には2周目を終えた時点ですぐ目の前に見えたなっちの背中が遥か遠くに見える。

『ヤバイ、このままでは、負けてしまう!』

ハンディー戦とは言えこのまま負ける訳にはいかない。まっちはギアを落としありったけの力でラストスパート、全開のまま(?)最終コーナーに突っ込み逃げるなっちに何とか追い付き10センチ差で辛くも勝利!

『ハハハ、パパは強いのだよ!』

となっちに話し掛けるつもりが体に異変が、、、。
急に気分が悪くなり、全身から脂汗が流れ落ち立ち上がれない。 丁度通りがかったご近所さんに平静を装い何とか挨拶を交わすも、今度は強い吐き気に襲われる、、、。 3回戦を申し出るなっちを見上げ 『せ、洗面器持ってきて。』と死にそうな声で懇願。ただ事では無いまっちの表情に慌てて浴室に走るなっち。

10分後、何とか体調は復活。原因は良く分からないが普段の不摂生がたたり貧血にでもなったようだ。自分のペースを守って自転車に乗ることが重要だと気付かせてくれる出来事であった。

『パパ、なっちと自転車レースして歩けなくなったんだよね。』

と事ある毎に友達や親戚に言いふらすなっちの表情は何だかうれしそうだ。 父親の迫真の演技(?)は、どんな言葉よりもなっちに自信を付け、自転車好きにさせる効果があったようだった(公道自転車レースは白熱し過ぎてかなり危険なのでもう控えることにします)。

4月29日多摩川サークリング1

なっちには、多摩川の源流から海に注ぐ羽田の河口までを40ページにわたり子供にも分かり易く描いた「たまがわ」という絵本をプレゼント。
近いうちにこの本に載っている多摩川サイクリングロードを一緒に走ろう!


5. 背中押し大作戦その3(そうちゃん編)
 そうちゃん(息子)は、補助輪がまだ外れていない。これをどうにかしないことには家族での自転車ライフは始められないと、SGMの防波堤に補助輪を外したそうちゃんの自転車を持ち込み、今日こそは乗れるようにしようと特訓を始める。
SGM自転車レッスン1 SGM自転車レッスン2 SGM自転車レッスン3

はじめはやる気に満ちたそうちゃんであったが、これまで努力をする経験をほとんど積んでいないためか、右に左に数回転んだだけですぐにやる気を失くし座り込んでてしまう。

『今日は乗れるようになるまで帰らないからね!』

自転車を通して「辛さを乗り越え成し遂げる達成感」を味あわせようと、まっちが鬼教官を演じ教習を続けると、次第にそうちゃんの表情は暗くなり、ついには完全にべそをかいてしまった。これ以上続けても自転車嫌いにしてしまうだけだと判断、泣く泣く教習を終える。

せっかく現実味を帯びてきたファミリー多摩川サイクリングへの道がここで途絶えてしまうのか、、、。

苦肉の策として思いついたのが、まっちが自転車の後にそうちゃんを乗せ、まっち+そうちゃん組、ゆっち、なっちの自転車3台でサイクリングをする方法。
ロードレーサーにチャイルドシートを付けるのは無理そうだが、ガレージセールで4000円で買った通勤用に使っているマウンテンバイクになら取り付けられそうだ。この方法なら今すぐにでも家族4人で多摩川サイクリングが実現できそうだと自転車用チャイルドシートを購入。取り付けに着手した。

SGM自転車レッスン1 SGM自転車レッスン2 SGM自転車レッスン3

チャイルドシートを取り付けるには、まずはキャリア(荷台)を取り付けねばならないが、リアサスが装備されている通勤用マウンテンバイクには普通のリアキャリアは取り付けられない。止む無く強度不足には目をつぶり、今まで使ってきた耐用重量は15キロのシートポストキャリアにチャイルドシートを取り付けることにした。
チャイルドシートの取付金具はそのままでは使えないため、切断・穴開け等加工を施し、何とか取り付け完了。何はともあれこれでファミリー多摩川サイクリングに行けるぞ!!!


6. 第1回多摩川ファミリーサイクリング
(郷土の森公園(府中)〜くじら運動公園(昭島)区間)

 全長55キロ(往復110キロ)の多摩川サイクリングロードを数回に分けて家族で踏破し、達成感を味わうという野望を胸に秘め、

『とりあえず走ってみよう!』

と、春の風薫る5月18日に初のファミリーサイクリングを決行。
できることならサイクリングロード起点の羽田か終点の羽村から走り始めたかったが、「そうちゃん用チャイルドシートの強度不足」、「なっちの未知数な体力」、「ゆっちのロードレーサー初乗り」、と不安要素が多いため、車で15分の府中市「郷土の森公園」をスタート地点に決め、9時半頃家を出発。

公園近くの無料駐車場に車を停め、 なっち、ゆっち、まっち+そうちゃんの順で駐車場に隣接するサイクリングロードを上流に向けて走りだす。

セレナで出発 そうちゃんチャイルドシート 弾丸なっち

先頭のなっちは鉄砲玉のように威勢良く飛び出して行ったが、3キロもしないうちに疲れてしまい休憩。10分程休むと元気を取り戻し、また鉄砲玉のように走り出すが、今度は1キロ程で休憩。

『サイクリングっていうのは早く走る必要はないんだよ。ゆっくりでいいから、休憩を挟まずに走る方が結局は疲れずに長い距離を走れるんだ。』

と説明すると、恐ろしく遅いペースに収束。
『遅ーい』と叫びたい気持ちをグッと堪え、後のチャイルドシートに乗るそうちゃんとの会話に気持ちを向ける。

川の流れや空の色、渡り鳥やラジコン飛行機、野球、サッカー、テニス、マラソン等、ゆっくりと流れる景色の中で目に留まるものについて会話をする。よく考えてみると、こうして2人で景色を見ながらゆっりと会話をするのは初めてのことだ。

「どうして空は青いの?」

子供の様々な質問に答えるのは頭を使うが、昔の汚れ無かった頃(?)の自分を思い出したり、新しい発見があったりしていいもんだ。

休憩 木橋 松屋

ゆっちは「自転車のサイズが自分には合ってない」とか「尻が痛い」と言いつつも何とかロードレーサーを乗りこなしていた。 蛇行するなっちを注意する余裕もあるようで、これなら安心だ。

休み休み1時間半程走り、立川駅近くの松屋で昼飯に鮪丼を食べる。もう少し走ってみようと上流を目指しているとそうちゃんの珍発言。

「パパ、マヨネーズ!」
『えつ?何?』
「ほらあそこ、マヨネーズが走ってるじゃん。」
『もしかして、モノレールのこと?』
「そうだった。間違えちゃった。」

多摩モノレールのガードを超え昭島市のくじら運動公園に到着。そこそこの達成感が味わえたのでココで折り返す。

くじら運動公園前 疲れてるなっち もうすぐゴール

25キロを過ぎたあたりでなっちの元気が急になくなってくる。アイスクリームで釣ったり、そうちゃんに「おねえちゃん頑張れ!」とか「おねえちゃん遅い!」とか大声で言わせて奮起させたりして何とか出発地点の駐車場まで戻ることができた。

家族も楽しんでくれたようなので、これからもファミリーサイクリングが続けられそうだ。 しかも、サイクリングは子供に体力や根性を付ける効果もありそうだ。

【走行データ】
走行時間:3時間22分、 走行距離:34キロ、 平均スピード:10.1キロ


7. 第2回多摩川ファミリーサイクリング (郷土の森公園(府中)〜登戸区間) 暑さも収まり気候も良くなってきた9月27日、2回目のファミリー多摩川サイクリングに行ってきた。
行くと決めたのが10時過ぎのため出発は11時半頃、前回同様家から約15分の府中市郷土の森公園近くの無料駐車場に車を停め、今回は下流方向に向けて休日ののどかな多摩川サイクリングロードを走り出す。

駐車場スタート 京王相模原線ガード下 ボート乗り場


京王相模原線ガードの日陰で30分程休憩。その後、登戸駅手前で走りやすそうな神奈川側の対岸に移ろうと多摩水道橋を渡っていると、眼下に何艘かの手漕ぎボートが見え、後に乗るそうちゃんが言った。

「このお船って自分で漕ぐんでしょ!乗ってみたいな。」

本心はもっと下流まで走りたかったが、まあのんびりするものいいかと1時間程ボートに乗る。川の中央までまっちが漕いでバトンタッチ。まっすぐに進まず回ってばかりだったが、子供達は初めての手漕ぎボートを楽しんでいるようだった。

ボートを降りると寒くなってきたので、予備に持って来た洋服2枚を子供達に着せ、ここで折り返すことにする。

手漕ぎボート 日が暮れたサイクリングロード 駐車場に戻ってきたぞ!

秋は日が暮れるのが早く、日が傾いてきたと思ったらあっという間にまっ暗になってしまった。街灯の無いサイクリングロードには本当の暗闇となる部分があり、子供達は少し興奮しているようだ(自分も子供の頃は夜暗くなった世界に出歩くだけでわくわくしたものだった)。念のため3台にライトを取り付けておいて本当に良かった。

駐車場に戻る頃には体が冷え切ってしまったが、秋の訪れを実感できる楽しいサイクリングであった。

【走行データ】
走行時間:2時間19分、 走行距離:22.3キロ、 平均スピード:9.6キロ


8. 第3回多摩川ファミリーサイクリング 瀬田駐車場〜羽田区間)

 10月13日体育の日に職場がらみのスポーツイベントが、羽田のサイクリングロード基点がら3キロ程にある某会場で開催される。 このスポーツイベントには、なっち、そうちゃんの大好きなゴーオンジャーのショーも行われるそうで、多摩川サイクリングに組み込めば楽しい1日になりそうだと準備を開始、9時半頃自宅を出発する。

これまでに走ってきた登戸ボート乗り場近くに車を停め、イベント会場までをサイクリングしたいところだが、これでは距離が長すぎる。もう少し距離を縮めようと車で川沿いを下っていると、二子玉川駅近くの河川敷に1日500円で停められる瀬田駐車場を発見、車を停めた。
しかし、この駐車場からイベント会場までの距離をよくよく測ってみると20キロ近くもあるではないか。ゴーオンジャーショー開始まであと2時間弱、どう走れば間に合うかを頭でシミュレーションするが、どうしても間に合うシナリオが描けない。
会場近くの別の駐車場に停め直すしかなさそうだと車のキーに手をかけた丁度その時、ゆっちが勢い良く車のドアを開けて外に飛び出した。

「私となっちで先行ってるから私達の自転車先に組み立てて!」

ゆっちのやる気に背中を押され急いで2人の自転車を準備、 慌ただしく出発する2人を見送る。
ゴーオンジャーが見たくてたまらないなっちのやる気に満ちた真剣な表情に、 「ひょっとすると間に合うかも?」 と微かな期待を膨らませつつ、マウンテンバイクにタイヤ、チャイルドシートを装着、そうちゃんを後ろに乗せ10分遅れで2人を追いかける。

もうすぐ羽田 ゴーオンジャーショー ゴーオンジャーと握手


ゴーオンジャーの効果は絶大だった。
何度も休むだろうと考えていたなっちは飲み物を飲む以外は休まずに18キロを一気に走破、ゴーオンジャーショーの開始と同時に会場に到着。そうちゃんと2人で5人の戦士の登場に目を輝かせた。

2時間半程でイベント会場を後にし、サイクリングロード基点近くの、羽田空港が見える景色の開けた場所に移動。

『ここで多摩川を流れてきた水が海に注ぎ込むんだね。』

心地良い潮風を浴び、途切れること無く着陸する飛行機を眺めながらしばらくのんびりする。そうちゃんが自走でないのが残念だが、理想の「活き活きとした健康的な生活」に家族で近づけたような気がするひとときであった。

羽田起点 羽田4人 飛行機拡大

「さて、駐車場まで20キロもあるからそろそろ行こうか!」

今来た道を折り返し、今度は上流を目指す。
5キロ程走ると、「喉乾いた!」とのそうちゃんの声。 ゆっち、なっちを先に行かせたまま自動販売機を探していると携帯が鳴る。ゆっちからだ。

「なっちが付いて来てないんだけど一緒だよね?」
『えっ(汗)、一緒じゃないよ!』

急いでなっちを探すが見つからない。「これって、かなりヤバイんじゃないか?」と事態の重大さを感じ始めていると、ゆっちの携帯が鳴る。

「もしもし、お嬢さんを野球グランドの前で預かっているのですが、、、」

頬に涙の跡を作ったなっちと再会。なっちは橋のたもとのS字カーブでサイクリングロードを外れ未舗装の小道に迷い込んだらしい。泣いている所に声をかけてくれた親切な方に、覚えていたゆっちの携帯番号を伝えたらしい。
大事に至らなくて本当に良かった。お礼を言い、気を取り直して駐車場を目指す。

帰り道の開けた空 熟睡そうちゃん 無事帰還

「お姉ちゃん見つかって良かったね!」

後ろのそうちゃんに話し掛けるが返事がない。停車して振り返るとそうちやんは熟睡モード、駐車場まで目を覚ますことはなかった。なっちは意外にもペースを落とすことなく走り続け、明るいうちに駐車場に戻ることができた。

なっちが、いつの間にか携帯番号を覚えていたこと、自分なりに迷子を解決したこと、(半べそになって36キロを走った春から半年も経たないのに)42キロを余力を残して走ったことに、子供の成長の早さを感じる盛りだくさんのサイクリングであった。

【走行データ】
走行時間:3時間44分、 走行距離:42.6キロ、 平均スピード:12.0キロ

 


9. 第4回多摩川ファミリーサイクリング (くじら運動公園〜福生南公園区間

 近所のスーパー駐車場での自転車特訓が実り、5歳の誕生日を前にようやく補助輪が外れたそうちゃんに「多摩川サイクリングロード走る?」と尋ねると「やってみる!」との返事。これまで3回の多摩川ファミリーサイクリングでの最上流到達地点「くじら運動公園(立川市)」から約3キロ上流の拝島市の河川敷に桜並木のお花見スポットがあるようで、自転車4台を車に積め込みいざ出発!
もうすぐ羽田 ゴーオンジャーと握手

くじら運動公園の無料駐車場に車を停め、12インチ、18インチ、26インチ、27インチの4台の自転車で走り出す。 フラフラと蛇行するなっちと、スピードの遅いそうちゃんの2人が周りに迷惑をかけぬよう気を配りながら走るのはかなり大変。

『なっち左に寄って!そうちゃんペース落ちてるよ!』

2人を導きつつお花見スポットに到着。
『う〜ん、まだちょっと早かったなぁ』花見客は大勢いるものの、ほとんどの桜がまだ2〜3分咲き(気の早い満開の桜を見つけ記念撮影)。
「もう疲れちゃった〜」と言うそうちゃんをまっちのチャイルドシートに乗せ、自転車を道端に隠す。

羽田起点 羽田4人 飛行機拡大

『なっち、ここから先は思いっきり走っていいんだからね。』

起点の羽村を目指し3台でペースを上げて走り始めるが、2キロ程走った福生南公園でなっちが転倒。手のひらから出血し「もう帰りたい!」と半べそ。羽村まで約7キロを残し今日のところはここで折り返す。

帰り道の開けた空 熟睡そうちゃん 無事帰還

このあたりは公園が多く、先頭のなっちは目新しい遊具を見つける度に公園休憩を繰り返す。 隠しておいた自転車を拾い先頭をそうちゃんにバトンタッチするとさらに休憩回数が増える。走り出したかと思うと100メートルも走らないうちに、次の休憩に入り、リュックサックからうれしそうにお菓子を取り出すそうちゃんの表情を見て気が付いた。

『そうちゃん、お菓子食べれるからいっぱい休憩してるんでしょ!』

静かにうなずきお菓子を頬張るそうちゃんに、「もう次は駐車場まで行くからね!」と、最後は一気にくじら運動公園まで戻る。

今回は「サイクリング」と言うより「公園巡り」と言う感じのファミリーサイクリングであった。

【走行データ】
走行時間:1時間7分、 走行距離:9.8キロ、 平均スピード:8.8キロ

 

 


10. 第5回多摩川ファミリーサイクリング (瀬田駐車場〜登戸区間

 2009年6月になっちは(まっちの誘導により(笑))お年玉で24インチのギア付自転車を購入。初めての新車購入記念に、近所にオープンしたスパゲティーレストランまでサイクリングに行ったものの、その後家族で自転車に乗る機会を持てぬまま季節はもう秋。
9月13日朝起きると清清しいいい天気だったため、昨年中途半端に走り残した多摩川サイクリングロード「瀬田〜登戸区間」を走ろうと、セレナに自転車4台を積み込みいざ出発!

瀬田付近駐車場 往路 大黒屋1

河川敷の瀬田駐車場は満車のため、近くのコインパーキング(100円/時間)に駐車し、前回同様ボロマウンテンバイクにチャイルドシートを取り付け4台で走り出す。
なっちはすぐにニューマシンに慣れたようで「みんな遅い!」と言わんばかりの走りをするが、そうちゃんはペースが上がらず「疲れた〜」を連発。スタート地点(瀬田駐車場)にも辿り着かないうちからやむなく休憩タイム。『そうちゃんって、こんなに体力無かったっけ?』と思いつつ彼の自転車を見てみると、今朝空気を入れたはずの後輪がペッチャンコに潰れている。バルブの虫ゴムが裂けていたため予備の虫ゴムに交換し、携帯用空気入れ(ロードレーサーの仏式バルブと一般車の英式バルブの両方に対応できる優れもの)で空気を入れて修理完了。

「なんだ、速く走れないのは自転車のせいだったんだ。」

と笑顔を取り戻したそうちゃんは、初めて使うギアの感触を確かめながら走るなっち姉ちゃんを追い掛け元気良く飛び出していった。

中間地点の東名ガード下で2回目の休憩。『そうちゃんそろそろチャイルドシート乗る?』 と尋ねるが、まだ大丈夫とのことで、そのまま4台体制で登戸を目指す。途中そうちゃんが見通しの悪い曲がり角で前から来た小学生と正面衝突してしまうが、運良くお互い怪我も無く、出発から1時間程で折り返し地点にの登戸ボート乗り場に到着した。

大黒屋2 パターゴルフ1 パターゴルフ2

サイクリストの為にあるような河川敷の食堂(大黒屋)で、塩ラーメン(¥500)と焼きそば(¥500)を注文し、 (以前ここで乗った)手漕ぎボートを眺めながらの昼飯。 心地良く汗を流した後に青空の下で食べる料理はとても旨かった。

帰り道、往路で気になっていたサイクリングロード脇の「多摩川うなねパークゴルフコース」というパターゴルフ場を覘いてみる。ひばりコースと、かるがもコースの計18ホールを回れて大人400円、子供100円という良心的な料金に誘われやってみる。
これが子供達に大好評、大人も子供と一緒に楽しめた。 コースの攻略を独自の視点で考えプレーするなっちに宮里藍を、 はじめは1ホール30打程で回っていたが次第に上達し最高5打で回れたそうちゃんに石川遼の姿を重ねて勝手な空想をしつつ、のんびりとグリーンを回った。

パターゴルフ3 復路 駐車場に生還

夜から用事があったため、ひばりコースの9ホールのみを回り、暗くなる前に急いで帰宅。 秋を先取りする楽しい1日であった。

【走行データ】
走行時間:約1時間40分、 走行距離:約 11.5キロ、 平均スピード:約7キロ

 


11. 第6回多摩川ファミリーサイクリング (福生南公園〜阿蘇神社区間

 これまで5回に分けて家族で走ってきた多摩川サイクリングロードも川上の数キロを残すのみとなった。 この残りの区間の近くに羽村市動物公園という子供が喜びそうな観光スポットを発見。サイクリングにこの動物園を組み込めば楽しい1日になりそうだと、2009年10月12日にファミリーサイクリングに出発!

福生南公園無料駐車場に車を停め自転車4台で走りはじめると、数分しか経たぬうちに先頭のそうちゃんが自転車を投げ出し公園のベンチに座り、「川入ってもいい?」と靴を脱ぎ始める。
サイクリングに来た意識の全くない行動に苦笑しつつ、まあ急ぐ旅でもないと一緒に笹船競争等をしてしばらくのんびりと過ごす。

瀬田付近駐車場 往路 大黒屋1

その後も走り出したかと思うと楽しそうな場所や遊具を目ざとく見つけては休憩を繰り返す子供達との超のんびりサイクリングを続け、正午頃ようやく多摩川サイクリングロード始点と言われる玉川上水の取水口に到着。 伝説のハンサムブラザーとして女性サイクリストの間で密かに騒がれている(?)玉川上水を開削した技師・玉川兄弟の銅像の前で記念撮影。

多摩川サイクリングロードを上ってきたサイクリストのほとんどはここで折り返すが、この先一般道を挟みさらにサイクリングロードが続いているらしく、この際終点まで行ってみることに。
車通りの激しい路地を100m程走ると、再び川沿いのサイクリングロードに出られた。そしてそこから清清しい秋風の吹く高台の上を2キロ程走ると、阿蘇神社の鳥居横で車止めに遮られる形でひっそりと多摩川サイクリングロードは終わっていた。

大黒屋2 パターゴルフ1 パターゴルフ2

小さな達成感を感じつつ記念写真を撮っていると、背後から

『お兄ちゃん!銀杏(ぎんなん)落ちてるから一緒に拾おうよ!』

との声。振り向くと老夫婦が銀杏拾いを勧めてくれる。
熟した果肉から銀杏の実を取り出すのに手が臭くなるので躊躇していると、

「銀杏は今の季節だけのもので酒のつまみに、そりゃあもう最高だよ!」
「すぐに採られちゃって毎年お目にかかれないのに今年はすごく運がいい!」
「買えば結構高いし、最近は高級料亭じゃなきゃ食べられなくなったね!」
「調理方法だって簡単。紙袋に入れ塩をまぶして電子レンジでチンするだけ!」

と、ジャパネットたかたのTVコマーシャルを見ているかのような言葉巧みな勧誘に負け、しばし銀杏拾い。

銀杏夫婦に別れを告げた後、公園で遅めの昼食。羽村動物公園へ行こうと誘うが、子供達は動物園に行くより復路も(往路で遊び足りなかった)公園に寄りながら帰ることを望み、動物園は寄らずに帰り道も公園巡り。鉄棒やジャングルジムで思いっきり遊ぶ2人は、休憩中に疲れを溜め込み、のんびりと自転車を漕ぎながらその疲れを解消しているようだった。

こうして福生南公園まで戻り、1年半をかけての家族での多摩川サイクリングロードの全工程踏破が完了した。

パターゴルフ3 復路 駐車場に生還
夜、老夫婦が教えてくれた電子レンジでの調理方法(銀杏10粒につき約1分)で酒のつまみに銀杏を食べる。これまでの多摩川サイクリングを思い返しながら喰べる銀杏は、深まる秋の味がした。

【走行データ】
走行時間:約1時間44分、 走行距離:約 14.4キロ、 平均スピード:約8.3キロ

〔多摩川サイクリング編 完〕