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1. 2013年いかだレースでの敗北

 2013年の夏に狛江古代カップ多摩川いかだレースに親子3世代で参加した数週間後、浜名湖の若大将(おじいちゃん)が

「もしもFRPでいかだ作ったら、来年またいかだレースに出るか?」

と聞いてきた。『来年の話はいくらなんでもまだ早いだろう!』と思いつつも詳しく話を聞いてみると、どうやら若大将は86艇中52位という今年のレース結果にどうしても納得がいかず、上位チームに対抗できるようないかだでリベンジをしたいと考えているようだ。

朝焼け堀切岬

「貧乏暇無し」の自分にとって、「金あり暇あり」の若大将がいかだ作りに興味を持ってくれたのは願ってもない話であり

『是非ともセレナで運べる最強のいかだを作ってよ!』

と伝えると、「そうか。」とニヤリと笑う若大将であった。

 


2. いかだ材料の選定

 数週間後、電動ノコギリの音で目が覚め、若大将の家にいかだの進捗を見に行くと、驚いたことに完成間近のいかだが客間に横たわっているではないか。

『もうかなり出来上がってるじゃん!でもこれFRPじゃないんじゃないの?』

FRP(繊維強化プラスチック)は軽さと強度を兼ね備えている反面、高価で一旦形を決めると形状変更が難しい欠点があり、何か他に良い材料はないかと考えた末に辿り着いたのが雨どい(薄肉塩ビパイプ)のようだ。

知林ヶ島

雨どい(薄肉塩ビパイプ)は、強度こそFRPに遠く及ばないものの、重量、値段ではFRPに圧勝、そして、パイプの端部を塞ぎ、電化製品の梱包等に使われるPPバンドで束ねるだけで形状変更が容易ないかだが作れるというFRPには全く太刀打ちできない特徴がある。パイプの連結や端部の閉塞処理に難しさはあるものの、不満点の解消や修理、その年々の乗船者に合わせた仕様への改造が容易にでき、末永くいかだ作りが楽しめそうだとφ75×2700mmの雨どい20本をネット購入し、製作に着手したそうだ。

車への積載、保管方法、舟の補強等、まだいくつか課題が残っているようだが、この調子なら今年のうちに試運転ができるかもしれないゾ!

 


3. いかだのヨット化計画始動

 数週間後、いかだの進捗を見に行くと、何だか見慣れないパーツがいかだの周りに転がっているではないか。

『あれ、この部品は?』
「おう、いかだは年1回しか使い道がないから、いくつかの部品を装着すればヨットになるんじゃないかと考えているんだ。」

どうやら若大将はいかだ作りをきっかけに自作ヨットで浜名湖を豪遊した若かりし日々の記憶が蘇り、半世紀ぶりにヨットを作りたくなってしまったようだ。

「ちょっとこの設計図見てみろよ!」

設計図には、セール(帆)・センターボード(キール)・ラダー(舵)・水切りの4部品を装着したいかだの三面図が描かれていた。若大将はいかだにこの4部品を装着すればヨットとしての機能を付加できるはずだと、過去の経験から各部の取り付け位置や大きさを割り出し、4部品の制作に取り掛かったそうだ。

セールについては、コンパクトに車内積載できるようにするのが難しく、ウインドサーフィン用セールを流用使用するそうだが、他の3部品は既にほぼ完成。
ヨットに対して抱いていた優雅でスマートでイメージとは程遠い無骨な舟が出来上がりつつあるが、果たしてこんな舟でセーリングが楽しめるのだろうか?


写真左:水の抵抗を軽減するための水切り(ポリカーボ中空板&塩ビパイプ製)
写真中:着底時に自然に跳ね上がる構造のセンターボード(アルミ板&塩ビパイプ製)

写真右:反転して船上に上げられる構造のラダー(アルミ板&樹脂パイプ製)


4. いかだの更なる進化

 ネット購入したウインドサーフィン用セールが届いた。セールを組み立て、マスト根本のユニバーサルジョイントを舟のジョイントベースにワンタッチで取り付け、3本のステー(テントに使うロープを流用)でマストを固定してヨットの完成!

主要諸元:船長3900mm、船幅860mm、マスト長4000mm、セール面積4.5m2、総重量44.5kg(いかだ+水切り34kg、RIG(セール)部7kg、センターボード+ラダー3.5kg


セール・水切り・センターボード・ラダーの4部品を選択的に取り付ければ、いかだやヨット以外にも使い道がありそうだ。使い道・装着部品・装備品・定員を一覧表にまとめてみた。

No. 使い道 装着部品 装備品 定員

イメージ

1 いかだ 片側パドル 4人  
2 カヌー 水切り 片側パドル 4人
3 カヤック 水切り

両側パドル

3人

4

ウインド
サーフィン

水切り+セール+
センターボード
2人
5 ヨット 水切り+セール+
センターボード+
ラダー
2人

ヨット同様、カヌー、カヤック、ウインドサーフィンも未体験なのでぜひやってみたい。なんだか面白くなってきたぞ。

 


5. 管理・運搬費用0円の実現 

 一般的な1〜2人乗りヨット(ディンギーと呼ばれる競技やセーリングの習得に使用されるヨット)は普通乗用車での運搬が難しく、マリーナでの係留保管やトラック(牽引装備付の乗用車と車検付トレーラー)での運搬に多額の費用が掛かってしまう。

末長くヨットを楽しむには、この継続的に発生する費用を0円に抑えられる身の丈に合ったヨットを作れるかどうかに掛かっていると言っても過言ではないだろう。

維持費0円を実現しようと立てた3つの方策「乗用車での手軽な運搬」「邪魔にならない自宅保管」「軽量化」についてまとめてみた。

 

(1)乗用車での手軽な運搬
 多摩川いかだレースでいかだをセレナのルーフに載せて運んだ経験から、ヨットもルーフに載せて運べそうな見当はつくが、少人数(2人以下)で積み上げ・積み降ろしをする方法を考えておいた方が良さそうだ。

INNOやTERZO,THULEからカヌーやボートをルーフキャリアに積むためのアタッチメントが発売されており、それらを使った積載方法を調べてみるが、キャリアから地面まで2本の足を延ばしたりするそれらの方法はどれも複雑で良いとは思えない。今回のヨットに最適な積載方法とはどのようなものだろうか?

舟の長さ(3900mm)が、セレナ車高(1865mm)のほぼ2倍であるところに着目、セレナの後方上角(ハイマウントストップランプが埋め込まれている部分)に舟を立て掛け、舟の中心を支点にやじろべえのように回転させれば、小さな力で大きな舟をルーフの上まで載せられそうだ。ハイマウントストップランプと接触する舟の部分にクッション材を取り付けたり、ルーフキャリアの上を舟が前後にスライドできるように舟体の凹凸を無くすなど細工を施し、2人で短時間で積み上げ、積み下ろしができるようにした。

(2)邪魔にならない自宅保管
 舟の保管場所として目を付けたのが、以前いかだを吊るしていたカーポートの屋根下の空間だ。カーポートのフレームに取り付けた滑車にロープを通して舟を吊り下げ、頭上のデットスペースに空中保管できるようにした。これなら邪魔にならずに雨を凌げるので、5年でも10年でも問題無く保管できそうだ。

舟を頭上まで持ち上げるのにかなり大きな力が必要だったため、前後の定滑車の傍に動滑車を追加して半分の力で持ち上げられるように改良、1人作業を可能とした。

(3)軽量化 
 「セレナの天井にルーフキャリアを付けておいてくれよ。」

若大将に頼まれてルーフキャリアをネット購入、取り付けようと説明書を読むと積載許容重量40キロと書いてある。舟本体からセール・センターボード・ラダーは外して車内運搬するにしても、300Lを超える舟本体を40キロ以下で作るのは至難の技だ。しかしながら、軽量化は運搬と保管の両方に大きく影響するため、何としても実現したい。

最も軽量化に貢献しているのが雨どい(軽量塩ビパイプ)を使用したことだが、雨どいは強度が不足しているため局部的に大きな力がかかると潰れてしまう。そのため、着座位置に発砲スチロールの板を敷いて力が分散して掛かるようにしたり、外周部のパイプを2重に重ねたり、強度が必要な部分を配管用塩ビパイプにしたりして補強。これら地道な努力により、ヨットに必要な強度を確保しつつ舟体重量を34キロまで軽量化した。


6. 第1回試運転(2013年9月22日)
 自作ヨットの試運転のため、水の綺麗さと風の良さで定評のある本栖湖へ。ルーフに載せた舟が高速走行に支障をきたすのではないかと心配していたが、時速90キロまで風切り音はほとんど無く、これなら今後も舟を積んでの高速道路利用ができそうだと胸を撫で下ろす。
2時間程で本栖湖(R139側の無料大駐車場)に到着、積載時同様やじろべえ方式で舟を下ろし、専用台車に載せて湖畔まで運搬。

もう9月下旬だというのに湖面はキラキラとしてまだ夏の雰囲気。まずはセール・センターボード・ラダーを付けずにカヌー状態で進水。

「カヌー状態なら全く問題無し!」

と言う若大将を信じ、早く乗りたくて溜まらなそうなそうちゃんと2人で静かな湖面をパドルでかき混ぜながらひと回り。左右方向の安定性には欠けるものの、水切り装着や軽量化の効果が出ているようでスイスイと前に進む。水浸入で船体が重くなった先日のいかだレースの時とは比べ物にならない軽快感に来年のいかだレースが楽しみになってくる。

次はいよいよヨットとしての試運転だ。セールを広げてマストやブームを取り付けていると、

「何だか家族で面白そうなことやってるねぇ!」

とサーファー風のオヤジさんが話し掛けてきた。オヤジさんと雑談をしながらステー3本でマストを舟に固定してヨットの完成。いつの間にか集まって来た見物人達が見守る中、雨どいヨットの初セイリング!

正面から弱い向かい風が吹いているため、セールを風が当たらない角度に回してオールで水をかいて岸を離れる。水深が深くなった所でラダーとセンターボードを水中にセットし、セールを揚力が生じる角度に回す。クローズホールド(風上から約45°の角度)で颯爽と離岸するはずが、待ってていたのは甘くない現実だった。
(ヨットの原理・名称・操縦方法はこのサイトを参照)

風を受けたセールが回らずに傾いてしまう問題が発生。ステーを張り直して舟に対して垂直にマストを立てようとするも、左右のステーを増し締めした分だけ舟がU字型にたわんでしまうようで、いくらステーを張ってもセールのぐらつきは直らない。セールが後方に傾くと頭上のスペースがなくなり、さらにセールを回しにくくなる。後ろ寄りに座り直して頭上に空間を作ろうとするも、セールの後に2人で座っているため舟尾が沈みそれも難しい。
そんな中、左舷からの突風で右舷が沈む。横転回避のために左に座り直すも舟はさらに傾きを増す!

『これってかなりヤバいんじゃない?』

転覆を覚悟し、ポケットにスマホや車のキーが入っていないのを確認していると、若大将が立ち上がり、ブーム(セールに付いた横棒)を直接掴んでセールを回転させて風を逃がして転覆を回避、ブームを前後に傾けるウインドサーフィン的操作で舟を旋回させ岸まで帰還。

「いやー、一時はダメかと思ったよ。こういう奥の手があったんだ(笑)!」

このヨットにそうちゃん、ゆっちを乗せるにはまだまだ改良が必要のようだ。

最後にもう1度カヌー状態に戻して、そうちゃん、ゆっちと3人で乗舟。湖面に散らばる足漕ぎボートやカヌー、湖岸の人々の「アレは何だ?」という視線に、笑顔で手を振り応えながら大きく湖面をひと周り。終了間際、舟上でペットボトルに水を汲もうとしたそうちゃんが湖に転落しかけるアクシデント発生、いい機会だと水上レジャーの危険性を説き、本栖湖を後にした。

帰り道、ゆっちのリクエストで河口湖のハーブ館、宝石館を観光、若大将は家に辿り着くまでの間ずっとヨットの改良策を考えているようであった。


7. 5つの対策

 試運転で明らかになった問題に対し、下記5つの施策を施した。

〔対策1〕左右の安定性に欠ける。
→ 舟の左右にアウトリガー(張出し浮体)を装着した。

〔対策2〕マストが風に負けて傾いてしまう。
→ アルミ製横フレームを追加。その両端からステーを張りマストを固定した(横フレームはアウトリガーフレームと兼用)。

〔対策3〕浅瀬でセンターボードが湖底に引っ掛かる。
→ センターボード挿入穴にクサビ型の発泡材を取り付け、途中位置で固定できるようにした。

〔対策4〕雨どいパイプ内に水が浸入した。
→ パイプ継ぎ目の接着不良箇所を再接着。船体後部の20度の曲げ角度を船首と同じ30度に変更。平時パイプ端部が水に浸からなくした。

〔対策5〕前後の安定性に欠け、乗員の動線が交錯した。
→ マスト前がサブ席・マスト後がメイン席と定め、前者がパドル操作、後者がセンターボード・ラダー・セール操作をするよう役割分担を定めた。

「次は絶対大丈夫だから、ぜひ今年中にもう1度試運転に行こう!」と改善効果を早く確認したがる若大将。寒くなる前にぜひもう1度試運転に行きたい。

 


8. 第2回試運転(2013年10月6日) 
 自転車愛好会秋のお泊りサイクリングが延期となり週末の予定が空いたので、ヨット試運転の予定を入れる。今回からアウトリガーもルーフに積まねばならぬため、前日の夕方に積載方法を検証。
まず車の真横からベースキャリアの上にアウトリガーを載せ、その中央凹部に後方からやじろべえ方式で舟本体を重ねてロープで共締め。15分程でスムーズに両者の積載ができた。

 

翌朝早朝5時頃自宅を出発。積載物が増えた分、風切り音がうるさくなると思っていたが意外にも前より静かになり、時速100kmまでは問題は無さそうだ。

2時間程で本栖湖に到着。前回駐車したR139側の無料大駐車場近くの岸辺は遠浅でセンターボードが下ろしずらかったため、今回は水際から深くなっている岸辺を数キロ南に見つけて近くに駐車。岸辺へ通じる小径に岩が置かれていて台車が使えないため、若大将と舟を持ち上げて運搬。軽量化のお陰で2人なら台車無しでもなんとかなりそうだ 。

雨上がりの湖畔には前回のキラキラとした夏の雰囲気は微塵も無く鬱蒼としていて、まるで違う湖に来てしまったかのようだ。活気の無くなったオフシーズン感の充満した湖畔で舟とアウトリガーをロープで一体化させ、そうちゃん、ゆっちとセールを立てずに乗舟し、アウトリガーの効果を確認。
舟幅が増して両側パドルが使いにくくなったものの、左右の安定感は格段に向上、浮力アップにより尻が濡れる心配も無く、これならのんびり快適に景色を楽しめそうだ。

オールを漕ぐ手を休めると、湖面の一部に日差しが差し込み何とも神秘的。
大自然の懐へ放り出されたようなこの開放感こそカヌー(カヤック)の醍醐味なのかもしれない。

次は若大将お待ちかねの雨どいヨット2回目の試運転。
湖畔でマスト、センターボード、ラダーを装着。横フレーム両端から伸ばしたステーがうまく機能して今回はマストがしっかりと自立していていい感じ。

背中から風を受け、マスト前のサブ席に自分、マスト後のメイン席に若大将が座って岸を離れる。センターボートとラダーを水に沈め、セールを揚力が生まれる角度に回すと「グググググッ」と風の力で舟が走り、セーリングの感覚を初体験。

まずは若大将のお手並み拝見といこう。横風を受けてウインドアビームで舟を走らせたり、ジャイビング(風向きに方向転換)を体感していると、突然若大将の表情が曇りだす。

「ラダーが壊れた。岸から沖へ風が吹いているから今日はもう上がろう。」

これからという時にセーリング不能となってしまい、収納したばかりのパドルを再び取り出してセールに風が当たらない角度に回して岸に戻る。

岸で待つ2人に事情を説明すると、前回に続き今回もヨットに乗れない失望を隠し切れぬ表情。舟から3点セットを取り外し、そうちゃんと若大将で湖面をひと回りして本栖湖を後にした。

精進湖に立ち寄りつつ南甲府に住む高校同窓生のトンカツ屋「かつみ食堂」で同窓生T君が揚げた美味いトンカツを食べ、奥様お勧めの桔梗屋信玄餅工場を観光。残念ながら信玄餅詰め放題には定員オーバーで参加できなかったが工場見学をして家路に付いた。


9. ラダー修理と更なる改良
 帰宅後若大将は、鉄芯入り塩ビパイプとアルミ板でラダーを強度アップしたものへと改造。

 

前回の改造でヨットは格段に良くなり、ラダーの他には問題は無いように思えたが、マスト回転時に3本のステーを巻き込む分だけセールが僅かに傾いていたらしく、マストにステーが巻き込まないように取付金具を右上写真のようなコの字型に改造。
もうすぐ11月だけあり急に寒くなったので、次の試運転は来年だな。


10. 第3回試運転(2013年11月3日) 

「ラダーの修理は全て終わったよ。」
「明日の本栖湖はいい風が吹きそうだ。」

若大将の今年もう1回本栖湖に行きたそうな発言に、週末今年最後の本栖湖行きを決定(寒さが苦手なゆっちはお留守番)。

早朝5時頃、熟睡するそうちゃんとヨットを積んで自宅を出発。若大将にヨット操縦方法の基本を教わるうちに、あっという間に本栖湖に到着。

やはり11月だけあり湖畔は寒く水は冷たい。最寄りの河口湖に朝から風が吹く天気予報が出ていたので、本栖湖にも風が吹くと期待していたが、残念にもほとんど無風。「これじゃあ今日は練習にならないかもしれないなぁ」と若大将。


ヨットを組み立てていると、ようやくそうちゃんが目を覚ます。まだ寝ぼけているようなので車内で朝食を採るよう伝え、若大将とヨットの練習開始。

ヨットの不具合はほぼ解消しているので、今回はセーリングの伝授がメインになると、若大将がマスト前のサブ席、まっちがマスト後のメイン席に座って岸を離れるが、やはり風が弱くてセイルの角度を合わせても全く舟が走らない。

「湖面に小波が立って見える所に行けば少しは風があるかもしれない。」

若大将ののんびりとしたオール操作で草を求める遊牧民のように風を求めて湖面を移動するがどこに行っても風はあまりに弱く練習にならない。しばらく湖面を彷徨うも、「風が無いのではどうしようもならん」と一旦岸に戻る。

この風なら3人乗っても転覆の危険性はほとんど無いと、船尾にそうちゃんを乗せ、(若大将のオール操作で)3人で岸を離れる。そうちゃんにラダー操作を任せ、「あの湖面の木の棒に向かって進んで」「今度はこっちの大きな木に向かって」と舵切り練習。

富士山山頂には前回まで無かった雪がかかり、季節が確実に冬に向かっているのを実感。しばらくするとそうちゃんが「寒い」と震え出し本日のヨット試運転終了。

帰り道、若大将から

「ヨットはほぼ完成したから、あとは自由に使っていいぞ!」

とのお言葉、思いがけずも一風変わったヨットオーナーとなったが、これからどんなヨットライフを送ろうか?

 


11. 相模川カヌー遊び(2013年12月29日) 

 毎年年末に高校同期仲間で集まっては「年末行事」と称してオリジナルな企画を立ててまる1日思い切り遊んでいる。今年は(昨年同様)同窓生I君の勤める寺で座禅体験をする心積もりでいたが、日程の折り合いがつかず急遽別の企画を考えねばならなくなってしまった。

『6〜8人で楽しめる良い企画はないだろうか?』

いつもの仲間とどのように2013年を締め括りたいかを考えるうちに、完成間近の舟に乗るのが良さそうに思えてきた(1度に2名しか乗れないヨットは年末行事には適さないと考えていたが、カヌー状態にすれば4名まで乗れ、大勢でも楽しめそうに思えてきた)。SGMでのバイク遊びのついでに相模川を調査、堤防で堰き止められた池のような場所でカヌー遊びができると判断、今年の年末行事はカヌー体験をしようと皆に声を掛け当日を向かえた。

(前日の晩に行われた中学同窓会の興奮冷めやらぬまま年末行事当日を迎え)セレナに舟を積んで厚木にとんぼ返り。及川球技場で昼までフットサルで汗を流し、昼食後に相模川の例の場所に向かう。近くの駐車場で若大将の工夫が随所に見られる舟をルーフから下ろして仲間に初披露。

『2年前のタイヤチューブいかだから相当進化したねぇ。』

ほとんどが理系人間のため食い付きは上々。勢いをそのままに7人でぞろぞろと岸まで舟を運ぶと、年末の冷たい風が身にしみる。

「俺こういうアウトドア好きだけど、やっぱ季節間違えてないか(笑)?」

K君の意見に、『ホントだよ。いくらなんでも寒過ぎダロ!』と喉元まで出てきた言葉を押し殺し、『川に入る訳じゃないから全く問題無いよ。大丈夫、大丈夫!』と、万一川に落ちても笑って許してくれるであろう(もしかすると真冬の川に落ちるレアな体験を心待ちにしているかもしれない)テルと両側パドルを1本ずつ持ち、静かな水面に波紋を描きながら漕ぎ出して行く。浅瀬での座礁や強風での転覆の心配はほとんど無さそうなことを確認して岸に戻る。

心配そうに見守る仲間に、『全く問題無いからもう1人乗ってみよう!』と声を掛けるも、タイヤチューブいかだでの苦い経験が蘇るのか全員疑いの眼差し(涙)。テルが「実際乗ってみると思ったより安定しているから、これなら3人乗っても大丈夫そうだよ。」と発言すると、ようやく乗る気になってきたようで、まずはテル、まっちにS君を加えた3人(片側パドル3本)で乗舟。釣り人の近くを避けながら対岸近くの水中から突き出た棒を目指す。往路はスムーズに棒まで辿り着くも、復路は向かい風の影響で全くスピードが出ず、往路の数倍の体力を消耗しつつ岸まで帰還。

吃水線にはまだ余裕があり4人乗舟も無理では無さそうだが、この寒い中濡れるのは避けたいので今日は3人を定員と決め、N君、K君、アベチャンと交代しつつカヌー体験を行う(ゴッチャンは一身上の都合で乗舟を辞退(笑))。
『続きは本栖湖での夏合宿でやりましょう!』と相模川を後にした。

天然温泉「湯花楽」で冷え切った体を解凍し、「うえの薮蕎麦」で、本日もうひとつのメインイベントである(年々こちらの方が人が集まるようになってきている)同期忘年会開催。同期夫婦が打った年越し蕎麦を食べながら「今年の1冊交換会」と「音楽プロジェクト」を決行。サイゼリア、同期K君コンビニ事務所と場所を移しながら語り合い、今年1番の「遊び尽くした感」を心地良く味わいながら深夜帰宅した。

 


12. ヨット愛好会発足    NEW

(1)自転車とヨット
 ママチャリレース参戦をきっかけに自転車愛好会を結成してから早いもので6年が過ぎた。この間、2度の本州横断など充実した自転車ライフが送れたのは、きっと一緒に走ってくれる自転車愛好会仲間がいたからだろう。

 

自分はどちらかというと孤独を好むタイプの人間であるが、バンザイダートや自転車愛好会の活動を通じて趣味は楽しみや苦しみを分ち合う仲間がいてこそより一層楽しめるということを学んだ。趣味における同じ方向を向いた仲間は高い目標に立ち向かう力を与えてくれたり、辛さを楽しさに変えてくれるなど魔法のような力を幾度となく授けてくれた。


若大将から譲り受けたヨットでもこの力を積極的に使っていきたいと、行動力に満ちあふれたテル、サーフィン等海系スポーツに精通したフユチャンを筆頭とする高校同期仲間にヨット愛好会構想を話すと快く賛同してもらえ、自転車愛好会と兼ねる形での設立が決まった。

若大将からレクチャーを受けて家族でヨットの操縦技術を習得しつつ、友達とさらに高次元の楽しみを味わい、自転車以上に充実したヨットライフを送ろうと思う。

 

(2)目標の設定
 近年、大人の趣味として広まっている自転車(ロードバイク)は、ネットや書籍でいくらでも情報が入手でき、レースやポタリング、輪行旅行など遊び方が確立されているのに対し、ヨットはかなりマイナーで、遊び方の道筋が見えにくい。そこで、今後3年を目処に実現したい目標を3つ挙げてみた。

第1目標:狛江古代カップ順位30位以内(上位30%)達成。
第2目標:夏合宿の定着。
第3目標:雑誌の表紙を飾る。

このうち最も実現したいのが、第3目標『雑誌の表紙を飾る』である。
おそらく日本唯一という雨どいヨットの希少性を生かし、ヨットやサーフィン、アウトドア系の雑誌に売り込み、取材を受ければ書店の店頭に僕らの笑顔が並ぶのも夢では無さそうだ。

来たるべき取材日に備え、自由自在にヨットを扱えるようテクニックを磨きつつ、まだ誰も足を踏み入れていない未開の地を開拓するようなワクワク感や充実感を存分に味わっていきたい。

【To be continued.】