■ ガーネットプロジェクト (2009年12月29日)
(「文化祭によくある風景」ミュージックドラマプロジェクト)
1. 今年のプロジェクト 毎年年末に年末行事と称して高校同期の仲間で集まりスポーツ等をしている。この年末行事の活性化を目的に「35の夜プロジェクト(2006年)」、「夜空の向こうプロジェクト(2007年)」、「MONEYプロジェクト(2008年)」とカラオケプロジェクトを行ってきたが、今年はどうしよう?
今年の候補曲をいくつか上げてはみたものの、僕らの高校時代を歌にするこのプロジェクトの手法が既に新鮮味を失っており、例えどんなに自分達らしい歌を歌い上げようとも、これまで以上の達成感は得られなそうだ。そろそろプロジェクトの去就を考えた方が良さそうだ。
そんな漠然とした思いを持ちつつも、もし今まで通りのプロジェクトを続けるのなら、今年の紅白から今年の1曲を選ぶのが良さそうだとネットで曲目をチェックしていて目に留まったのが徳永英明の「壊れかけのラジオ」であった。
この歌が再び紅白で歌われるということは、きっと自分と同じように「少年から大人に変わる思春期をラジオと共に成長してきた」と感じる人が少なからずいるのだろう。そして自分も思春期の象徴と言えるラジオに対する思いを何らかの形でこの年末プロジェクトに盛り込みたい気持ちがグツグツと沸いてきた。
2. ラジオの記憶 小学校高学年の頃、「災害用持出袋から勝手に持ち出した黒いラジオ」をベットの脇に隠し、毎晩寝る前にイヤホンで聞くようになったのがラジオライフの始まりであった。その後中学に進学しラジカセを買うと、(まだレコードを借りる習慣はなく)自分の部屋にいる時間のほとんどをラジオを聞いて過ごし、テスト勉強をしているつもりがいつの間にかラジオを聞いているという日々を送ていた。
学校ではラジオ族を増やすのに邁進し、好きなあの娘と秘密を共有するかのようにラジオネタを語り合うのが密かな楽しみであった。
そんなかつてのラジオライフを思い返すうちに(ラジオへの思いを表現したい気持ちは、学生時代の感情を表現したい気持ちと混ざり合い)、当時ラジオで良く耳にした「ラジオドラマ」を当時の仲間とやってみたい気持ちへと変わっていった。
3. 青春ミュージックドラマ 「ラジオドラマ」とは、人の声や、雨音、学校のチャイム等音声のみで創られたドラマのことだ。テレビドラマと異なり聞く者がそれぞれの頭の中で自分なりの情景を思い浮かべられる点が、(まだ(笑))逞しい想像力を備え未来に希望を持つまっち少年には堪らなく、ラジオドラマに自分の理想を反映させては空想の世界を彷徨った。
ラジオドラマには、(辻仁成のラジオ番組で良くやっていた)人生ドラマ・ロックドラマ・SFドラマ、(「愛の安全地帯」というラジオ番組でやっていた)お洒落なドラマ等様々な種類があるが、高校時代の仲間と演じるには、(「菊池桃子のあなたと星の上で」というラジオ番組の「キミの青春日記」というコーナーで放送されていた)「バリバリの青春ドラマ」が丁度良さそうだ。
年と共に「ときめき」「あこがれ」「せつなさ」のような感情を失いつつあるが、これら学生時代は胃が痛くなる程に感じていた心の芯に電気が流れるような若さの象徴である感情が完全に枯れてしまう前に、(心の時計を高校時代に戻し)これらを仲間で演じてみたくなり、ラジオドラマとこれまでのカラオケプロジェクトを融合させた「ミュージックドラマ」の台本の制作に着手した。
4. 台本完成 様々な事情を勘案した結果、高校時代を描いた映画「時をかける少女」のテーマソングである「ガーネット/奥華子」を今年の1曲に決め、サビまでの部分でラジオドラマを演じてサビを皆で合唱するという骨組みに、高校時代のエピソードや仲間のキャラクターを盛り込んでいく。台詞の長さや雰囲気をメロディーに合わせる(間を生かした展開にする)のに苦労しつつ何度も細部を練り直し、年末行事当日の早朝になんとか下のような台本案ができた。
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ガーネット/奥華子(文化祭によくある風景台本案)
〜シーン1. 買い出し編〜
〔前奏〕 男A:あー、なんか腹減らない?(グランドかけてく〜) 男B:おっ、もう7時か。 男A:俺、ボンメートでおにぎり買ってくるけどお前も何か食べる? 男B:じゃあ、キャラメルコーンと期限切れの特価のパンあったら買ってきて! 男C:おっ、買出し?じゃあ俺、アセロラドリンク! 男D:じゃあ俺デカマルのとんこつ! 男A:なんだなんだ、今晩は長丁場になりそうだからみんなで一緒に行こうか。 皆 :そうだな。行こう行こう。(〜全てを照らす光に見えた)
〔ドアを開ける音〕 男E:あれ、みんなは?(好きという気持ちが分からなくて〜) 女F:私も今教室に戻ってきた所なんだけど、みんなで買い出し行っちゃったみたいだね。 男E:えっ、そうなんだ。さっきまで▲さんと、△ちゃんがいたはずだけど。 女F:▲さんは×君と帰っちゃったし、△ちゃんは自転車で誰か追いかけてどっか行っちゃったみたいだよ。 男E:そっか、じゃあ教室に俺達2人だけかぁ。(〜その意味を私に教えてくれた)
男合唱:あなたと過ごした日々をこの胸に焼き付けよう 思い出さなくても大丈夫なように いつか他の誰かを好きになったとしても あなたはずっと特別で大切でまだこの季節が巡ってく
〜シーン2. 2人の時間〜 男E:休憩、休憩、どうせこんなペースじゃ明日の文化祭までにお化け屋敷仕上がらないよ。(はじめて2人で話した放課後〜) 女F:えー、ちゃんとやりましょうよ。 男E:あっ、そうだ。男クラもお化け屋敷やるみたいだから一緒に見に行かない? 女F:えー、男クラなんて見たってしょうがないよ。 男E:みんなも買出し行ってるんだし休憩がてらちょっと行ってみようよ! 女F:まぁいいか、こんな時じゃないと男クラ入れないし行ってみるか(〜何故だか胸が痛くなったの)
〔ドアを開ける音〕 男E:さすが、男クラ、全く準備できてないじゃん。(変わって行く事を怖がってたの〜) 女F:あっ、窓も開けっ放し。でもココ3階だけあって田んぼがすごく綺麗に見えるよ。 男E:ホントだ。いい風入るね。 女F:あっ、新幹線 男E:俺、○とずっとこうして2人で景色を見ていたいな。 女F:えっ、(〜終わって行くものなど無いと思った。)
女合唱:果てしない時の中であなたと出会えたことが 何よりも私を強くしてくれたね。 夢中でかける明日にたどり着いたとしても あなたはずっと特別で大切でまだこの季節がやってくる
〜シーン3. もうすぐ卒業〜 女F:皐月祭終わったらもう後は勉強するだけだね。(いつまでも忘れないと〜) 男E:うん、今がいつまでも続けばいいんだけどね。 女F:そういえば昨日■ちゃんに□君が告ったらしいよ 男E:えー、そうなんだ、□やるなあ。 女F:ところで、●くんはだれか好きな人いないの? 男E:えっ俺、おれは、、、(〜今頃私は涙がこぼれてきた)
全員合唱:あなたと過ごした日々をこの胸に焼き付けよう 思い出さなくても大丈夫なように いつか他の誰かを好きになったとしても あなたはずっと特別で大切でまだこの季節が巡ってく
〜シーン4. 告白〜 男E:さっきの答えだけど、 〔後奏〕 女F:えっ、 男E:おれ、きみのことが、、
END
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 女性パートをどうするかという頭の痛い問題もあったが、ジョーが前回同窓会メンバーに声を掛けてくれているようだし、カラオケマシンのボイスチェンジ機能や、ヘリウムガスによる声質変換(笑)の奥の手もあるのできっと何とかなるだろう。
5. 年末行事当日 今年も例年のようにフットサル(及川球技場)、温泉(飯山本陣)、昼飯(ビナウォークラーメン横町)の後、カラオケボックス(シンシア海老名店)で当ミュージックドラマプロジェクトの開始。
「毎年文句を言いつつも周りを盛り上げくれるジョーの骨折による不参加」、「僕以外誰もガーネットの原曲を知らない」、「女性パートをお願いしたい同窓生の30分間のタイムリミット」、という3重苦の厳しい状況に、一瞬嫌な空気が流れかけるが、このプロジェクトに掛ける思いを説明、気の通う仲間の協力に支えられ、「とにかく集中して全力でゴールを目指そう!」という理想的な雰囲気ができ上がる。
同じ学び舎で同じ時間を過ごした仲間だけに苦労の跡が滲む台本にも共感してもらえたようで、細部を煮詰めつつ詳細意図の説明を重ねるが、気持ちが乗り過ぎてしまい、なかなか先に進まずシーン1の説明が終わった時点で残り時間は10分足らず。しょがなく後半(シーン2〜4)の詳細判断は個人に委ね、ぶっつけ本番で録音開始。この緊張感がたまりません(笑)!
録音機材を回すとそれまでの和やかな雰囲気が一転、皆真剣モード。それまでとは見違える素晴らしい演技に自然と笑顔が溢れてくる。後半はさすがに説明不足で意図が伝わっていない部分もあったが、視線やジェスチャーで意思を伝え合いつつ無事シーン4まで辿り着き、拍手の中録音終了。
「今回ばかりはダメかと思ったけど何とかなるもんだね。」
「はじめはとんでもない台本に思えたけど、最後には良く思えてきたよ。」
「台詞言いながら当時を思い出してちょっと照れたりした。」
と、いつになくお褒めの言葉を貰い大きな充実感。「別々の方向を向いていた皆のベクトルが1つに重なり大きな力となる」この感じはまるで高校文化祭の時のようで、車でガーネットの原曲を聞きつつ、この祭りの後の爽やかな余韻を楽しんだ。
その後、3人が加わり同窓生の蕎麦屋で思い出話に花を咲かせ、いつものサイゼリアで反省会。今年も1年で最も忙しい日は終わりを告げた。
「個性が私に贈られた贈物ではなく、私が戦いをもって獲得をしなければならない理念であることを知った」
とは、哲学者三木清が「人生論ノート」に書いた言葉であるが、年々個性を発揮できる機会が減る中で、毎年戦いの場を与えてくれるみんなどうもありがとう。 (引き戸の音を合成し音声ファイル完成(MP3形式/5分20秒/3メガ)。動画は PRIVATE(パスワード認証エリア)よりご覧頂けます。)
〔ガーネットプロジェクト 完 〕
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